タイ国鉄譲渡キハ183系 室蘭港船積み

2016年度に廃車となったJR北海道のキハ183系のうち、1981~1982年製の17両(キハ183-104・208~212・215・218・219、キハ182-22・23・29・30・39~42。先頭車9両、中間車8両)がタイ国鉄(SRT)へ譲渡されることとなった。

この17両は2017年5月16~19日に苗穂運転所から陣屋町駅まで甲種輸送され、2020年3月25・26日に室蘭港崎守埠頭に搬入されていた。2021年11月16日~19日にかけて船積みが行われ、同年12月6日にタイ・レムチャバン港に着岸した。2021年12月13日にレムチャバン港にて車両の報道公開が行われた。

キハ183系のタイ国鉄への譲渡は、2017年5月20日付(陣屋町駅への甲種輸送の直後)に北海道新聞が報じていたが、その後は目立った動きもなく、陣屋町や崎守埠頭に留置されたままであった。しかし、それから4年以上経過した2021年9月6日、タイ国鉄がキハ183系の購入について契約を締結したことが公式発表された(車両自体は無償譲渡で、輸送関連費4,225万バーツ(約1億4,200万円)をタイ国鉄が負担)。新型コロナウイルス(COVID-19)や各種計画変更の影響により計画は大幅に遅れていたようだが、最初の報道から4年越しでのタイ国鉄への譲渡が実現した。

車両はバンコクのマッカサン鉄道工場(Makkasan Workshop)にてオーバーホールや各種改造・改装を行い、早ければ2022年半ばより試運転を開始する予定である。タイのDailynewsの2022年1月5日付の報道によると、17両は4両編成4本と1両の予備車として組成される予定(先頭車9両・中間車8両のため、予備車1両は先頭車とすれば組成は可能)で、バンコク~アユタヤ間、バンコク~チャチューンサオ間等での観光列車としての運行が計画されている。また、将来的にはラオスとの旅客列車等でも使用する計画である。車両の塗装は、乗客が日本の列車の雰囲気を感じられるよう、JR北海道時代のとかち色を継承する予定とのことである。

また、2016年に譲渡されたJR北海道の14系客車10両(オハ14 503・507・508・510・531、スハフ14 506・509・551・555・556)についても2022年より改造工事に着手し、5両編成2本に組成して観光列車として使用する予定と報道された。バンコク~ナムトク間やナコーンラムパーン~チェンマイ間等で運行予定で、運行ルートに沿った外観塗装、内装とする計画である。

なお、キハ183系の海外譲渡は、ミャンマー国鉄(2008年・2010年譲渡)に次いで2例目である。

関連ページ:「タイ国鉄譲渡キハ183系-営業運転開始」


室蘭港崎守埠頭に横一列に留置された、17両のキハ183系。特急「オホーツク」や特急「大雪」等で使用されていた車両で、いずれも「とかち」色を纏っている。


反対側から。4年以上潮風にさらされて、外板に錆が目立つ車両もある。特に手前から3両目のキハ183-215の前面には大きな発錆が生じている。



1984年度に先頭車化改造を受けたキハ183系100番台(全4両)のうち、日本に残る最後の1両であったキハ183-104も輸出の時を待つ。なお、同じくキハ183系100番台のキハ183-103はミャンマー国鉄に譲渡されている(詳細はこちらへ)。キハ103-101・102は2008年に苗穂工場で解体され、現存しない。


側窓に貼られた、2017年の甲種輸送の際の輸送票。


船積み日の直前に側窓に掲示されたシッピングマーク。今回の輸送のサプライヤーはヤシマキザイ。


崎守埠頭で朝日を浴びるキハ183系。


崎守埠頭には、今回のキハ183系の他にJR北海道のDD51形機関車5両と、保守用車(マルタイ等)4両も輸出を待っている。


陣屋町駅に留置されているJR北海道のDD51形電気機関車5両とホキ800形8両。
2021年11月時点で北斗星色のDD51形は崎守埠頭・陣屋町に合わせて9両留置されたままである。なお、2018年には2両のDD51形がタイに渡り、タイのインフラ建設会社である「A.S. ASSOCIATED ENGINEERING (1964) CO.,LTD」(以下、A.S.社)に譲渡された(詳細はこちらへ)。


崎守埠頭の近くのヤードに置かれた保守用車(バラストレギュレータ)3両。この3両はキハ183系とともに船積みされ、タイへ渡った。


2021年11月18日。この日はキハ182-41・42、キハ183-209、キハ182-39・29・23、キハ183-210、キハ182-22の順に9両の船積みが行われた。
まずはキハ182-41の車体が吊り上げられる。


キハ182-41の車体をトレーラーで輸送した後、同車両の台車も別のトレーラーに積まれる。


キハ182-41の台車を積載したトレーラーが岸壁に向かう。


輸送船の脇に移動するキハ182-41。
今回の輸送船はタイ船籍の「SEA WISDOM」。2010年に日本(檜垣造船)で建造された船である。


船積みの時を待ち続けるDD51形や保守用車と並ぶキハ182-41。


本船のクレーンにて吊り上げられるキハ182-41。


続いてキハ182-42も岸壁へ輸送される。


クレーンで大空を舞うキハ182-42。


続いて先頭車のキハ183-209。車体をクレーン2台で吊り上げ、トレーラーが慎重にバックする。



定位置まで来たら、トレーラー上に台座となる木材をセッティングし、その上に車体を下ろしていく。


積載完了後、クラクションを軽く鳴らして港湾内を移動開始。



トレーラーに載って移動するキハ183-209。


1年半以上、共に埠頭で船積みを待ち続けたキハ183とDD51の最後の顔合わせ。


「お先に!」


ここからは方向転換し、船の脇へバックで進んでいく。



本船のクレーンに、吊り上げのためのワイヤーをセッティング中。
(1両目の車体→1両目の台車→2両目の台車→2両目の車体→(以下繰り返し)の順に車体と台車を交互に積んでいたため、その都度吊り具の交換に時間を要していた)



吊り上げ開始。地切りヨシ!


DD51や保守用車が見守る中、あっという間に吊り上げられていく。



午後も引き続き作業が進められた。玉掛け準備中のキハ182-29。


夕方に吊り上げ作業を開始したキハ183-210。



トレーラー上に台座の木材をセッティング中。


積載完了し、出発。


港湾内移動中。



ライトアップした、東日本最大の吊り橋である白鳥大橋をバックにキハ183-210が進む。


トラックの背面の照明がキハ183の顔を照らす。


船積みの際にはすっかり暗くなっていた。バックで輸送船の下へと進む。


本船クレーンで吊り上げられるキハ183-210。照明が準備され、夜間作業も順調に行われた。


午前中に積まれたキハ183-209とは反対側の船倉に向かうキハ183-210。



最後の1両となったキハ183-211。四方から照明を浴びる。
しかし、ここで突風と大雨による作業中断でタイムアップ。結局、キハ183-211と保守用車3両の船積みが完了したのは翌日(2021年11月19日)であった。なお、これら最後の4両は甲板上に積載されたとのことである(オンデッキで輸送されるキハ183-211を輸送ルート中のどこかで見られないか検討したが、ついに叶わなかった)。


2017年5月に苗穂運転所から陣屋町駅まで甲種輸送され、2020年3月に室蘭港崎守埠頭に搬入されていたJR北海道のキハ183系17両(キハ183-104・208~212・215・218・219、キハ182-22・23・29・30・39~42)が、タイ国鉄への譲渡されることとなった。2021年11月16日~19日にかけて船積みが行われ、タイ・レムチャバン港に向けて出港した。

タイ国鉄へのキハ183系への譲渡は今回が初めてである。報道によると、タイ国鉄では観光列車等に改造して使用予定とのことである。

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関連ページ:「タイ国鉄譲渡キハ183系-営業運転開始」

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