金浦都市鉄道(金浦ゴールドライン)-路線紹介

金浦都市鉄道(キンポドシチョルト)は陽村(ヤンチョン)~金浦空港(キンポゴンハン)間10駅23.7kmを結ぶ路線である。愛称は金浦ゴールドライン(キンポゴールドゥライン)。陽村駅付近のみ地上で、その他の区間は地下である。全区間複線(右側通行)で、第三軌条集電方式による直流750V電化。軌間は1,435mm(標準軌)。全自動運転を実施している(安全のため全列車の進行方向最前部に職員が添乗)。車両基地は陽村駅の南側にある金浦漢江車両基地で、韓国の都市鉄道の車両基地で初めて転車台が設置された。2019年9月28日に現営業区間が開通した。

全列車が2両編成で運転され、各駅のホーム有効長も2両編成分のみである。列車は全区間(陽村~金浦空港)を走行するものと、九来(クレ)~金浦空港 間を区間運転するものの2種類があり、全区間運転の列車と九来~金浦空港 間運転の列車の運行比率は原則1:2である(ラッシュ時を除く)。後述の通り、一時期はソウル地下鉄9号線の延長区間として計画されていたものを軽電鉄に転換したため、他の軽電鉄よりも駅間距離が長く、特に高村~金浦空港の駅間距離は韓国の軽電鉄で最長の5.9kmもある。表定速度も韓国の軽電鉄で最も速い。

使用車両は1000系。現代ROTEM製で、2017年に2M0T(Mca-Mcb)の2両編成(2連接車)23本(46両)が製造された。車体はアルミ合金製。車両寸法は長さ13,700mm×幅2,650mm×高さ3,400mm。設計最高速度は90km/h、営業最高速度は80km/h。加速度は3.96km/h。車両形式は1100形(Mc)-1200形(Mc)で、下2桁が編成番号を示す(第1編成(101F)ならば1101-1201となる)。IGBT-VVVF制御で、制御装置は現代ROTEM製。車両の基本設計は牛耳新設軽電鉄UL000系に準じている。また、翌年に製作されたインドネシアのLRT Jakarta (LRTJ)向けの車両は、当車両(金浦都市鉄道1000系)をベースに製作された。

信号システムはCBTC方式で、日本信号が開発したSPARCSを採用している。

当路線は国道48号(金浦大路)の渋滞緩和と、金浦漢江新都市の広域交通の改善を目的に建設された。初めは軽電鉄の路線として計画されたが、その後金浦市は軽電鉄規格ではなくソウル地下鉄9号線の延伸という形での建設の誘致に力を入れ、金浦市は9号線誘致のために政府及び京畿道から一切補助を受けずに建設するという誓約をした。最終的に9号線の誘致は建設費負担が多大となる(9号線の建設計画が4両編成規格から8両編成規格に変更となり、ホーム有効長延伸のため1駅あたり100億ウォン超の追加費用が発生する)ことから断念し、元の軽電鉄規格での建設で決着したが、事業費負担方式は変更されなかったため、金浦都市鉄道は韓国の都市鉄道で初めて国費支援及び地方債発行なしで建設された路線となった。なお、都市鉄道法にて都市鉄道の建設費分担率は国費6割、地方自治体4割と規定されている(但し、ソウル特別市に限り、ソウル市が6割、国費が4割である)が、例外的に変更することが出来、金浦都市鉄道では総事業費1兆5,086億ウォンのうち、韓国土地住宅公社が1兆2,000億ウォン、金浦市が3,086億ウォンを負担した。韓国土地住宅公社負担分は金浦漢江新都市の入居者が支出した交通分担金(2兆ウォン)の中から賄われ、韓国で初めて受益者負担によって整備された都市鉄道路線となった。

軽電鉄規格での建設決定後もホーム有効長は当初4両分を確保する予定だったが、建設費圧縮のため2両分に変更された。沿線入居者が急増し、平日ラッシュ時を中心に深刻な混雑が発生しており、2024年に車両を増備して運転間隔を短縮する予定である。




金浦都市鉄道の車両として導入された1000系。2連接車で、2017年に23本が製造された。混雑緩和のため2024年までに5編成を増備する予定である。

九来~陽村にて


車両をサイド寄りから見る。無人運転を実施しており、前照灯ユニットの間に前方監視用のCCTVが設置されている。信号システムはCBTC方式で、日本信号が開発したSPARCSを採用している。屋根上の先頭部左右に2つ設置されている円形のアンテナはCBTCのアンテナで、日本信号のSPARCSを採用している車両には同形状のアンテナが設置されている(同じくSPARCSを採用しているインドネシア・MRT Jakartaの車両も同様のアンテナが設置されている)。
また、翌年に製作されたインドネシア・LRT Jakarta (LRTJ)向けの車両は、当車両をベースに製作された。

陽村にて


先頭部側面。腰部に金浦ゴールドラインのロゴマークが入る。台車はボルスタ付きのもので、釜山-金海軽電鉄1000系で開発された台車をベースとしている。

陽村にて


連接部の様子。貫通路上に引通し線がある。全駅にホームドアがあるため、転落防止幌は設置されていない。連接台車は付随台車である(非連接部の台車は動力台車)。

陽村にて


前面にはLED式行先表示器があり、韓国語→英語→中国語→日本語→列車番号の順に切替表示される。写真は九来行き。


英語表示。


中国語表示。


日本語表示。


列車番号表示。なお、列車番号は九来~金浦空港 間を運行するものは2000番代、陽村~金浦空港 間を運行するものは3000番代が割り振られている。


金浦空港行きの表示(英語・中国語・日本語)。


車内の様子。オールロングシートである。ドア間は8人掛け、車端部は5人掛け。


客用扉は開口幅1,500mmでプラグドアを採用。鴨居部にはLCD式案内表示器が設置されている。


LCDの画面。行先・次駅・路線図・ドアの開く方向等を表示する。


ドア間の座席。左側3つは「老弱者・妊産婦・障碍人(=障がい者)のための座席」とされている。


貫通路。連接車特有のターンテーブルがある。車端部に車椅子・ベビーカー・大型荷物等のためのフリースペースが設置されている。


現代ROTEMの製造所銘板(2017年製)。


車両先端部。運転台は中央部に格納されている。


無人自動運転を行っており、前面展望は抜群。但し、安全に配慮して、各列車の進行方向最前部に運転士の資格を持つ職員が添乗している。


前面窓の上にもLCDが設置されている。


金浦空港駅のコンコース。地下2階にあり、他路線との乗換通路もある(中間改札は無し)。
金浦空港駅は、金浦都市鉄道で唯一の金浦市外にある駅(ソウル特別市江西区)だが、金浦都市鉄道の駅で唯一、駅名に「金浦」がついている。


金浦空港駅のホーム。地下4階にある。2面2線で乗降ホームが分離されている(九来駅のみ島式ホームでその他は相対式ホームである)。全駅とも2両分の有効長しかなく(拡張不可)、平日夕方のラッシュ時は非常に混雑する。


金浦空港駅の駅名標。韓国語・英語・中国語・日本語の4か国語表記である。


下り列車は陽村行きと、途中駅(陽村の1つ手前)の九来止まりの2種類があり、陽村まで行く場合は駅のホーム等で行先を確認する必要がある。


金浦空港駅の九来・陽村方面の時刻表。時刻に括弧付の列車が陽村行きで、無印が九来行き。原則、九来行きと陽村行きは2:1の割合で運行されているが、混雑率改善のため、平日朝ラッシュ時は陽村行きはなく、すべて九来折り返しとなる(金浦空港駅基準で、6:22の次は8:03まで陽村行きが来ない)。陽村駅利用者の救済措置として、2021年6月14日から2024年11月(予定)まで7:00~9:00に5分間隔で九来~陽村 間を無料シャトルバスが運行している。


金浦空港駅の先の留置線。金浦空港駅に到着した全ての列車は、留置線に入線して折り返す。


駅部は開削工法、駅間のトンネルは原則シールド工法で建設されている。


高村駅のホーム。ホームドアは全駅に設置。


高村駅のコンコースとホームを結ぶエスカレーター。金浦都市鉄道は郊外の路線にもかかわらず地下深くにホームがある駅が多く、場基・雲陽の2駅は地下3階、傑浦北辺・沙隅の2駅は地下5階、豊舞・高村・金浦空港の3駅は地下4階にホームがある。


沙隅(金浦市庁)駅の出入口。


沙隅(金浦市庁)駅のコンコース。


沙隅(金浦市庁)駅の駅利用案内図。


沙隅(金浦市庁)駅のホームとコンコースを結ぶエレベーター。2基設置されている。途中階のB3・B4は通過。


沙隅(金浦市庁)駅のホーム。


陽村駅の手前100m程のところで地上に出る。金浦都市鉄道の本線の地上区間はこの僅かな区間のみ。


トンネルの入口の上から陽村駅方面を眺める。


上記地点から撮影した、陽村発金浦空港行きの列車。


陽村駅の当駅終着列車用ホーム。陽村駅は金浦都市鉄道唯一の地上駅である。乗降ホームが分離されており、改札も分離している(反対側に戻るには、一旦改札を出る必要がある)。


陽村駅の駅名標。
なお、陽村駅は当初の建設計画になかったが、建設工事開始後の2016年に追加で設置されることが決定した。


陽村駅の当駅終着列車用ホームの先には洗車機があり、営業を終えた列車がそのまま洗車できるようになっている。
なお、当駅どまりの列車は客扱い終了後に必ず洗車機を通過するが、必ず洗車する(洗車機を作動させる)とは限らない。


当駅終着列車用ホームの出場専用改札。反対側のホームへは改札外の地下通路で接続している。


陽村駅の駅舎。出入口は1番・2番の2か所がある。


2番出入口側は駅舎はなく、地形の都合上、緩やかな傾斜で地下通路に直結している。駅前は駐車場となっている。


陽村駅の金浦空港方面ホーム改札(入場専用)。


陽村駅の金浦空港方面ホーム。


陽村駅から金浦漢江車両基地(キンポハンガンチャリャンギヂ)方面を見る。
当駅は金浦漢江車両基地に隣接している。


金浦漢江車両基地内で折り返す列車。


陽村駅に到着した当駅止まりの列車を俯瞰。写真右上がトンネル入口。


客扱い終了後、回送列車として洗車機を通過。


車両基地内で停車し、折り返す。


金浦漢江車両基地の全景。金浦都市鉄道唯一の車両基地で、車両の留置の他、各種修繕もすべてこの車両基地で行う。


金浦漢江車両基地でひときわ目立つ、傍らに設けられた黄色い転車台。韓国の都市鉄道の車両基地で初めて設置された転車台で、車輪の偏摩耗を防ぐために定期的に編成ごと転回している。韓国の都市鉄道では車輪の偏摩耗防止のため編成の向きが固定されていない例が多々あるが、既存の路線では車両基地内にループ線を設けたり、出入庫線をデルタ線にして編成向きを方向転換している。転車台による方向転換は編成長が短い金浦都市鉄道だからこそ出来る業だ。


金浦漢江車両基地に留置されている車両を俯瞰。


金浦漢江車両基地に留置されている車両を地上から見る(敷地外から撮影。柵の隙間から撮影可)。いずれも前照灯が点灯した状態でスタンバイしている。


沙隅(金浦市庁)駅における金浦空港行き列車の到着から発車までの様子。列車は2両編成で、ホームの長さも2両分のみ。接近チャイムはKORAIL・ソウル交通公社標準のものを使用(金浦空港方面はオルゴール調メロディ)。

4K Video


金浦空港に到着した列車は一旦留置線に引き上げたのち、九来行きとして折り返す。接近チャイムはKORAIL・ソウル交通公社標準のものを使用(九来・陽村方面はラッパ調メロディ)。

4K Video



「金浦都市鉄道」に戻る