鉄原平和展望台モノレール

江原道鉄原郡にある「鉄原平和展望台」(철원 평화전망대/読み:チョルォン ピョンファジョンマンデ)は、非武装地帯を一望できる展望台である。1988年に復元移転された月井里(월정리/ウォルジョンニ)駅前にある旧 鉄の三角展望台(철의삼각전망대)に代わる展望台として2007年11月にオープンした。

当展望台は、駐車場からアクセスするためのモノレールが運行されている。2007年嘉穂製作所製のスロープカーで、レール長:280m、運行速度:80m/分(=4.8km/h)、路線の最大傾斜は11度(=194‰)(※1)。三相交流400V電化。レール規格はD550(D=Depth。数字はレール上面から底面までの深さ(高さ)を示す)。ステーションは2か所。運賃は大人2,000ウォン(2023年4月現在)。50人乗り車両を2両連結した100人乗りで、スロープカーとしては最大級の定員の車両である。冷房装置・姿勢制御装置付き。VVVFインバータ制御。

当施設は民間人出入統制区域内にあり、訪問するにはパスポートが必要である。また、民間人出入統制区域内にあるため、ツアーに参加して訪問するのが一般的である。

株式会社マルジンの「S&Uだより」(2010年7月10日発行)には、当モノレールの基礎工事を始めた途端「地雷が3個、人骨が5体出てきた」とのエピソードが記されている。

※1:嘉穂製作所の公式サイトの情報による。なお、韓国モノレール社の公式サイトの情報では、レール長:253m、運行速度:80m/分、路線の最大勾配は15度(=268‰)と情報に若干の差異がある。また、漢灘江管理事業所によるとレール長は283mと表示されている。

関連ページ:「京元線「DMZ train」・鉄原安保観光」


韓国の最北端で運行されるスロープカー。大型バス2台分の定員に相当する50人乗り車両2両編成(定員100人/編成)で運行されている。100人乗りはスロープカーの中でも最大級である。


勾配を上るスロープカー。傾斜角は11度で、上部・下部ステーション付近のみ勾配が緩和されている。朝鮮戦争の最前線地域であったため、建設中は地雷や人骨が発掘されたという。


下部ステーション(駐車場側)の駅舎外観。駅舎前にはM48A2C戦車が展示されている。1971年にアメリカ軍から買収した戦車である。


下部ステーションの駅舎と、写真左奥から延びる軌道。駅舎には「鉄原平和展望台 モノレールカー」(철원평화전망대 모노레일카)の文字。


モノレール乗り場の前にある大きなポストは「統一ポスト」と呼ばれている。このポストは郵便物を配達するものではなく、統一を願う想い等を書いた手紙を入れるためのものである。優秀と選ばれた手紙の主には、後日景品が贈呈される。


駅舎前に掲示されている、展望台までのルート案内。モノレールだと区間距離:283m、移動時間:3分10秒、徒歩だと区間距離:300m、移動時間:8-9分と記載されている。


下部ステーションのホーム。


車内の様子。座席は1両あたり前部に4席、連結面側の車端部に3席の計7席が設置され、残りの43名は立席である。つり革が多数設置されている。


車両最前部は2人掛け座席が横並びで設置されている。ガラスも大きく、前面展望は抜群。


連結面側。日本のスロープカーにはない、緊急時用の脱出ハンマーが設置されている。車内には防犯カメラも完備。


車内の製造所名板。「韓国モノレール 製造年度:2007年」と表記されている。車両の実際の製造会社は嘉穂製作所だが、同社の名前はどこにも記載されていない(他の韓国向けスロープカーも、基本的に銘板は韓国モノレール社の社名のみ記載されている。これは韓国内ではスロープカーの商流が韓国モノレール社経由となっている(嘉穂製作所は韓国モノレール社を代理店としてスロープカーを販売している)ためと思われる)。


ドア脇の操作盤。なお、当モノレールはオペレーターが乗務する。


上り(駐車場→展望台方面)の車窓。


路線の中央部付近で右に曲がっている。


カーブを曲がると見えてくる平和展望台。


傾斜が緩くなり、展望台前の上部ステーションへ。当車両は傾斜が変わっても床面を水平に保つ「姿勢制御装置」を搭載している。


上部ステーションに到着したモノレール。


上部ステーションの外観。


上部ステーションは出入口が分離されており、モノレール到着まではベンチに座る等して待機する。


地上側自動ドア(いわゆるホームドア)。スロープカー標準の腰高式のものが設置されている。


鉄原平和展望台(철원 평화전망대)の外観。3階建てで、1階は展示館、2階・3階は観覧館および展望台となっている。


3階の展望台からは非武装地帯を一望できる。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との軍事境界線までの距離は約2km。
なお、足元の赤い線から先は撮影禁止である。


1階の展示館部分。朝鮮戦争の歴史や非武装地帯の現状等を展示している。


帰路もモノレールで。上部ステーションに接近するモノレール。


下り(展望台→駐車場方面)の車窓。前方に広がるのは東松貯水池。


カーブを曲がった先に見えてくる下部ステーションと駐車場。


下部ステーションの様子。2階は展望台になっている。展望台からは発着するモノレールを撮影することもできるが、ツアーの場合は出発時間が決まっているため長居はできない。


下部ステーションに到着。


鉄原平和展望台はツアーで回るのが主流である。ツアーに参加すると、南侵トンネルの1つである第2トンネルも見学できる。


鉄原平和展望台の見学の後にツアーで回る、移転復元された月井里(월정리/ウォルジョンニ)駅。
※当駅の様子はこちらをご参照ください。



「軌走天外-韓国・江原道」へ戻る