平壌地下鉄 地下電動車1号

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実車紹介 2015年に製造された、平壌地下鉄初の自国製の営業用車両。片側3扉で、D型に準じた15m級車両。VVVFインバータ制御で、駆動方式は吊り掛け駆動である。モーターは国産の非同期牽引電動機(PMSM)を使用。Mc-T-T-Mcから成る4両固定編成(2M2T)で、車両番号はプルグンビョル(赤い星)寄り先頭車から順に101-102-103-104と付番されている。通常は千里馬線で運用されており、外国人観光客の乗車リクエストが事前にある場合は、あらかじめ車両の運用を調整して貰えることがある。革新線への非営業での入線実績もある。
当サイト内実車紹介ページ 「平壌地下鉄−地下電動車1号」
種車(改造元模型車両)
クリオコーポレーション「地下鉄ペーパーキットC2(平壌地下鉄100型現行仕様)」
製作数 4両編成1本(主体109(2020)年製作)
加工箇所 ・車体の組み立て・塗装
・列車無線アンテナの設置
・車両番号インレタ・各種表記類・現地指導記念プレート等の貼り付け
・足回りの設置(トミーテック(TOMYTEC) 鉄道コレクション「京阪電車大津線700形 きかんしゃトーマス号2015 2両セット」+鉄道コレクションNゲージ動力ユニット「TM-20」)
・窓ガラス・前照灯レンズの再現

Special Thanks:ますよし様(@masu_sengun216)

■実車
2016年1月1日より運行している「地下電動車1号」。1編成のみの存在。車両番号が100番台(101-102-103-104)であることから、日本の鉄道ファンからは100型と呼ばれることもある(但し、現地では「地下電動車1号」の呼称で統一)。
公式写真含めてほとんど上から撮影された写真はなく、屋根上の塗り分け等の資料集めに苦労するが、訪朝の際に偶然車両を上から撮影できた(ホームへの階段を下りるところで丁度入線してきた)ため、この写真や動画(2つ下に掲載)が模型作りに大いに役立った。
車両落成時の写真と見比べると、ドアの交換(ドア窓の天地寸法を縮小)、車両番号追加、モニター屋根の側面への機器(?)追加等が施されたことが分かる。

復興にて
前面窓は縦曲面ガラス。下縁も曲線となっている。側窓まわりの黒色の先頭部の塗分けにも注目。

栄光にて
復興駅を発車する地下電動車1号。この列車は回送列車で、一旦留置線に入った後、折り返しプルグンビョル(赤い星)行きとなる。

Full HD Video
栄光駅を発車する、プルグンビョル(赤い星)行きの地下電動車1号。加速時にVVVF制御の磁励音と吊り掛け駆動方式の独特の音が聞こえる。

Full HD Video

■製作した模型
クリオコーポレーションが発売している「地下鉄ペーパーキットC2(平壌地下鉄100型現行仕様)」を使用する。同社からは登場時仕様も発売されている。
キットの中身。当管理人にとっては初のペーパーキットである。
前面パーツのみ3Dプリントモデルである。
同封されている説明書に倣って組み立てる。
車体の組み立て。
モニター屋根の組み立て。
同キットの説明書には鉄道コレクション 高松琴平電気鉄道600形・700形の床板・機器・台車の使用を推奨とあるが、同セットは既に絶版で手に入りにくいため、同時製作した平壌地下鉄D型と同様に地元のホビーショップで特価で売られていた鉄道コレクション「京阪電車大津線700形 きかんしゃトーマス号2015 2両セット」を使用することとした。
平壌地下鉄D型の分と合わせて、鉄道コレクション「京阪電車大津線700形 きかんしゃトーマス号2015 2両セット」を4編成分(計8両)をまとめて購入。京阪700形の実車両数(5編成10両)に迫る両数である(ただ、全車両が改造の種車となり、元の形のままでは残らないため、改造前に並びを撮影)。
地下電動車1号の車体と京阪700形の車体を並べると、地下電動車1号の方が一回り大きい。
実車の寸法は、地下電動車1号が長さ15,550mm×幅2,650mm(高さは不明)、京阪700形が長さ15,000mm×幅2,380mm×高さ3,980mm。
京阪700形の床板だけそのまま地下電動車1号の車体にはめるとサイズが合わないことから、同車両の車体の窓下半分をスペーサーとして使用することとした(上半分は廃棄だが、窓枠等は各種パーツとして一部再利用)。こうすることで、床板が容易に着脱可能となり、さらに車体の強度も少し強化された。
地下電動車1号の車体と結合(地下電動車1号の車体の内側に、京阪700形の車体下半分を接着)。
車体の塗装は銀色で窓周りが黒、さらに窓下に赤帯が入るが、マスキングの手間等を考慮して、まずは車体を赤一色に塗装する(屋根は塗装省略)。少し名鉄のよう?
赤はMr.カラーのキャラクターレッドを使用。
次に赤帯部(赤を残す部分)をマスキングする。
なお、赤帯は妻面にも回り込むが、貫通扉には回り込まない(現地で確認済)。
銀色塗装後。銀色はGM鉄道カラーの銀(8番)で塗装。北京地下鉄1号線のDKZ4型やDK20型(塗装変更後)風?
最後に窓周りの黒を塗装。
前面窓周りも黒で、屋根上にかけて続いている。上からよく見ると、屋根上の塗り分けが曲線となっている。模型でも再現することとする(実車ではほとんど見えない部分だが、鉄道模型は上から見ることが多いため屋根上も目立つ)。
平壌地下鉄D型の前面の金太郎塗りのマスキング作成の際にも使用した、100円ショップ「ザ・ダイソー」で売られているコンパスカッターを使用。
前面のブラックフェイス塗装にあたってのマスキングの状況。一部はGSIクレオスの「Mr.マスキングゾル改」を併用(緑色部)。
黒を塗装。
マスキングを剥がした後。狙い通り塗装できた。
地下電動車1号の実車の前面。貫通扉(前面非常扉)に金鐘泰電気機関車連合企業所の社紋と車両番号が入る。
金鐘泰電気機関車連合企業所の社紋は当然ながらインターネット上にもなく、実車の写真も真正面から撮ったものがないため使えない。社紋を再現するのに良い方法がないか検討したところ、現地で購入した地下電動車1号の切手の右上に金鐘泰電気機関車連合企業所の社紋が入っていることを発見した。この切手をスキャンし、データで社紋部分のみ切り出した。
前面窓は縦曲面ガラスで、平面の透明プラバンでは曲げ加工不可であった(接着しても縁に沿って追従してくれない)。悩んだ末、瞬間接着剤のパッケージの透明プラスチック部を切り出して使用することとした。
前面窓接着中。
(たかが前面窓6枚、されど加工・取り付けに4時間以上かかった)









車両の側面(車端部)には、車両番号と「乗車人員 ○○名」と書かれた表記がある。乗車人員(=乗車定員)表記は中間車は両端、先頭車は片側(運転台がない側)。車両番号表記は片側のみである。自分で撮影した写真・動画を何度も見直して位置を確認した。また、乗車人員の人数も車両ごとに異なる。
車両番号・乗車人員表記の自作デカール貼付け後。細かい箇所だが、今回は再現可能なところは極力こだわった。
実車の誘導無線アンテナ。両先頭車で設置状況が異なることが動画を見返して判明したため、再現することとした。写真は101号車で、台座は6本。アンテナは「日」の字状に張られている(アンテナはモニター屋根の上を跨いでいる)。
104号車の誘導無線アンテナ。台座は4本で、アンテナは「ロ」の字状に張られている。
模型への誘導無線アンテナ設置中の様子。平壌地下鉄D型の模型と同様、屋根にキリで穴を開け、縫い針を一部切断の上設置。
完成した誘導無線アンテナ。写真は101号車で、「日」の字状に設置。
104号車。誘導無線アンテナを「ロ」の字状に設置。
各車両の中間のドアの脇(戸袋部)に設置されている、金正恩委員長の現地指導記念プレート。実車でも非常に目立つ栄誉あるプレートであり、実物の写真を真正面から撮影したため、これもデカールで再現する。
現地指導記念プレート設置後。なお、車両によってドアの左側に設置されている箇所と右側に設置されている箇所があるため、設置位置を写真・動画で確認した。(側灯のない側に設置)
完成。
編成組成。基本は市販のペーパーキットながら、現地での取材結果を最大限反映した、こだわりの車両である。
実車はMc1-T1-T2-Mc2で両先頭車が電動車・中間車が付随車の構成で、床下機器も違いを再現した。また、モーターを組み込んだ車両も先頭車とした。
同時期にまとめて製作した平壌の鉄道模型各種との並び。「Shapeways」で購入したD型T3は縮尺1/160(ヨーロッパ大陸規格)だが、地下電動車1号のみ縮尺1/150(日本の在来線規格)である。そのため、並べると地下電動車1号のみ少し車両が大きい。
平壌地下鉄模型走行の様子。
(詳しくは下記動画をご覧ください)
ベルリン交通局(BVG)のD型、プラハ市電T3型の3Dプリンター模型(いずれもShapewaysにて販売)、及び平壌地下鉄地下電動車1号のペーパーキット(クリオコーポレーション製)を平壌で活躍している仕様で製作した。いずれも車体のみのセットで、床下機器、動力、窓、アンテナ等は他の製品を加工した(動力は鉄道コレクション向けのものを加工)。製作にあたって平壌にて数回の現地調査を行い、可能な限り忠実に再現した。

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