平壌地下鉄 D型

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実車紹介 ドイツ・ベルリン交通局(BVG)で使用されていた車両で、1956年〜1965年に2両編成115本(230両)が製造された。1999年に平壌地下鉄に2両編成108本(216両)が譲渡。現在、営業用車両はすべて4両編成(2+2両、Mc-Mc+Mc-Mc)で運行されている。平壌地下鉄譲渡後に、塗装の変更(黄色一色塗装→薄緑・赤・緑の3色塗装)、先頭車屋根上への列車無線アンテナの設置、前面行先表示器の撤去等の改造が行われた。千里馬線・革新線の両線で運行されている。
当サイト内実車紹介ページ 「平壌地下鉄−D型」
種車(改造元模型車両)
fineTrains 「Berlin Baureihe D N [2x body]」 (「Shapeways」で購入した3Dプリントモデル)※車体のみのセット
製作数 4両編成1本(主体109(2020)年製作)
加工箇所 ・車体の塗装
・列車無線アンテナの設置
・車両番号インレタの貼り付け
・足回りの設置(トミーテック(TOMYTEC) 鉄道コレクション「京阪電車大津線700形 きかんしゃトーマス号2015 2両セット」+鉄道コレクションNゲージ動力ユニット「TM-20」)
・窓ガラス・前照灯レンズの再現

Special Thanks:ますよし様(@masu_sengun216)橋本 孔明様(@KoumeiHashimoto)朱長瑞穂(佐倉瑞穂)様(@akenagamizuho)

■実車
平壌地下鉄で活躍する、ベルリン交通局(BVG)D型。全230両中(DL型を除く)、216両が平壌地下鉄に譲渡された。
写真は801編成で、革新線で運行されている(2019年7月現在)。楽園寄りから順に801-802-803-804で組成されている。平壌地下鉄で唯一の相対式ホームを備える建設駅で、屋根上や床下を現地で詳細に観察できたこの編成をモデルとして模型で再現することとした。なお、革新線は外国人観光客にも広くは公開されておらず、当管理人は日本人として3番目に革新線に乗車した。
建設駅を発車する801編成。D型は屋根上の誘導無線アンテナの設置位置、側窓の仕様(上部内折れ窓または固定窓)等で個体差があり、取材した801編成の仕様を再現する。
横から見たD型(写真は別編成)。車体は薄緑・赤・緑の3色塗装。裾部の緑は対向ホーム等からでないと見えにくい。
建設駅における光復行き列車の到着から発車までの様子。建設駅は1978年9月6日に開業し、平壌地下鉄で唯一の相対式ホームである。そのため、当駅は過去には朝鮮ドラマの別れ話のシーンの撮影にもよく使用されたとのことである。

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■製作した模型
「Shapeways」で購入した3Dプリントモデル。「Shapeways」は世界最大級の3Dプリントサービスで、クリエイター販売サービスもある(クリエイターが自作した3Dモデルデータをユーザーが購入すると、Shapewaysが3Dプリントしてユーザーに発送される)。
今回は、クリエイター(3Dモデラー)のczhunterさんが販売しているベルリン交通局(BVG)D型のモデル(2両1セット)を2セット購入した。発送元住所はオランダのEindhoven(アイントホーフェン)で(同地にShapewaysの3Dプリンターがあると思われる)、航空便で輸送されてきた。発注から2週間弱で納品。
本来はベルリン交通局(BVG)仕様として販売されているものだが、今回は平壌地下鉄仕様で製作する。
3Dプリントモデルは車体のみのセットであるため、床下機器はTOMYTECの鉄道コレクションの各種製品を用いて製作した。写真は当車両の製作にあたっての主な使用品。
3Dプリントモデルの製作は初挑戦だったため、各種サイトを参考にして準備を進めた(特に「ルームCanadir」さんの記事「3Dプリンター出力品の下地処理」を参考にさせて頂いた)。
ますは車体をシンナーに漬け、サポート材の粉末や成分を除去する。
シンナーに漬ける前の車体(左)と、漬けた後の車体(右)。サポート材の粉末等が除去され、透明度が出てくる。
なお、シンナーに漬けすぎると車体が変形しやすいので注意。
車体をブラシ掛けしたのち、下地塗装を行う。3Dプリントモデルの下地塗装に適している「造形村GKサーフェイサー・グレー」を使用(当サイトと相互リンクし、毎度お世話になっている「KH Train Factory」管理人様(橋本孔明様)から直接アドバイス頂きました。誠にありがとうございました)。
「造形村GKサーフェイサー・グレー」で下地塗装した後の車体。
積層痕が目立つ箇所はやすりをかける。積層痕が残っていると塗装後に目立つため、目立たなくなるまで根気強くサーフェイサー吹き付けとやすりがけを繰り返す。
やすりがけと下地塗装完了後、まずはGM鉄道カラー 白3号(37番)で塗装する。
その後、上からGM鉄道カラー ブルーC(41番)をかなり薄く塗装した(実車の上半分は同塗料よりも薄い緑で塗装されているため、そのまま塗装すると色が濃すぎてしまう。)
前面のいわゆる「金太郎塗り」部分は、コンパスでマスキングテープを切って曲線の塗り分けを再現する。100円ショップ「ザ・ダイソー」で売られているコンパスカッターは安価にもかかわらず目盛りもついており、コストパフォーマンスが高い。
前面塗装の過程。左からマスキング前、マスキング貼付後、塗装完了後。
車体下半分の赤をMr.カラーのキャラクターレッド、裾部の緑をGM鉄道カラーの緑2号(13番)で塗装。マスキングを剥がして綺麗に塗り分けられた時の喜びは大きい。
車体乾燥中。
床下と結合。塗装は完了したが、まだ窓ガラスや車両番号がない。床下機器は黒色に塗装。
車両番号再現にはGreenMaxの車両マークを使用する。ただ、既存製品に同一の車両番号はないため、書体や収録されている車両番号の内容と睨めっこして、使用する製品を選定した(この選定に相当苦労した)。
今回再現する車両の番号は801・802・803・804、書体は日本の国鉄車体書体に類似している(同一ではない)ため、「6302 11・70・80系 0・300番代(白色)」を使用し、番号の一部を切り出して使用することにした(モハ80109・モハ80247・モハ80325・モハ80400から切り出し)。
車両番号インレタ貼り付けの様子(これまで自作デカールで貼り付けたことはあるが、市販のインレタを用いるのは今回が初)。
誘導無線アンテナ(ループアンテナ)の設置のため、車体を固定。ループアンテナの台座は、強度・価格・手軽さを考慮の結果、「ザ・ダイソー」で販売されている縫い針を使用。
実車の誘導無線アンテナの設置状況。屋根上の突起(ベンチレータ?)の上に台座が設置されている。
D型は車両ごとに誘導無線アンテナの設置位置が完全に異なるため、まずは実車(801編成)の各車両の設置位置をすべて確認する(自分が撮影した動画で確認)。

804号車:運転台寄りに1基設置
803号車:設置無し
802号車:運転台寄りに1基設置
801号車:運転台寄りに1基設置
調査の結果を受けて、屋根にキリで穴を開け、縫い針を一部切断の上設置。
糸を通していく(糸は市販のものを使用。万が一切れた場合にも交換が容易である)。
誘導無線アンテナ設置後。
実車の、中間封じ込めとなった元先頭車の様子。前照灯はレンズが撤去され、塗りつぶされている。車両番号は編成両端の先頭車と同様に貫通扉にも表記。
実車と同様に、中間封じ込めの先頭車の前照灯周りの加工を実施。
連結面。すべての連結器で電気連結器を使用しており、車両間のジャンパ線はない。
連結面の塗分けを含めて再現。連結器はKATOカプラー密連形Aを使用し、両端のジャンパ線は除去した。
連結後の様子。
完成。
地下電動車1号製作のため車体を解体した鉄道コレクション「京阪電車大津線700形 きかんしゃトーマス号2015 2両セット」の部品を再活用し、前面窓は同車両の戸袋窓、前照灯レンズは同車両のレンズを加工して設置した。
車両側面。側面の窓ガラス再現にはタミヤの透明プラバン(0.3mm厚B4サイズ)を使用し、上部内折れ窓はカッターで線を入れることで再現した。なお、一部編成は片側の窓が固定窓に交換されているが、801編成は2019年7月現在、すべての窓が上部内折れ窓のままであった。
編成組成。
平壌で調達した各種グッズを並べてみた。
同時期にまとめて製作した平壌の鉄道模型各種との並び。すべての車両が現地での独自調査の結果を反映して製作したものであり、思い入れは強い。
なお、これら車両は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大に伴う緊急事態宣言期間(2020年4月7日〜同年5月25日)に県境を跨ぐ外出の自粛が求められ、時間の有効活用のため製作した。
ベルリン交通局(BVG)のD型、プラハ市電T3型の3Dプリンター模型(いずれもShapewaysにて販売)、及び平壌地下鉄地下電動車1号のペーパーキット(クリオコーポレーション製)を平壌で活躍している仕様で製作した。いずれも車体のみのセットで、床下機器、動力、窓、アンテナ等は他の製品を加工した(動力は鉄道コレクション向けのものを加工)。製作にあたって平壌にて数回の現地調査を行い、可能な限り忠実に再現した。

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