ダッカメトロ6号線

ダッカメトロ6号線(ベンガル語:এমআরটি লাইন ৬ )はUttara North(ウットラ・ウット/ উত্তরা উত্তর )〜Kamalapur(カマルプール/ কমলাপুর )間17駅21.3kmを結ぶ路線である。全区間が地上(高架)区間である。全区間複線(左側通行)で、架線集電方式による直流1,500V電化。軌間は1,435mm(標準軌)。営業最高速度は100km/h。車両基地はUttara North駅の北側にあるDiabari Depot(ディアバリ車両基地 / দিয়াবাড়ি ডিপো )である。

当路線はバングラデシュ初となるMRTであり、同国初の電化路線でもある。また、バングラデシュの鉄道で初の本格的な保安装置を常時使用している路線で、信号システムはCBTC方式のATO・ATPを採用している。終日ワンマン運転を実施。

本邦技術活用条件(STEP)適用案件として日本の円借款によって整備され、路線の計画から建設工事、車両製造、システム等の整備、人材育成等に至るまで日本企業が関わった。そのため、車両や設備は日本の最近の都市鉄道のものに類似している。

列車は6両編成で運転される。車両は2020~2023年に4M2Tの6両編成24本(144両)が製造された(現地納入は2021年4月~2023年3月)。全車両が川崎重工業・川崎車両製。車体は軽量ステンレス製。基本設計は日本の規格をベースにしている。

4M2Tの6両固定編成で、編成組成はUttara North側から順にTc1-M1-M2-M3-M4-Tc2。IGBT素子を使用したVVVFインバータ制御で、制御装置は三菱電機製。直流1,500V架線集電方式で、パンタグラフは東洋電機製造製。台車はボルスタレス式(川崎重工業・川崎車両製)で、台車の形式番号はM台車が「KW-221」、T台車が「KW-222」。

車両寸法は長さ20,000mm(先頭車は20,400mm)×幅2,954mm×高さ4,280mm(屋根高さ3,673mm)。設計最高速度は110km/h(営業最高速度は100km/h)。車両番号は第1編成の場合、Uttara North側から「6-Tc1-001」-「6-M1-001」-「6-M2-001」-「6-M3-001」-「6-M4-001」-「6-Tc2-001」で付番されている(頭の6は6号線、末尾の3桁は編成番号)。

2022年12月29日に第1期(Phase 1)としてUttara North〜Agargaon(アガルガオン/ আগারগাঁও )間11.7kmが開通した。当初は両端駅を除いて未開業で、途中駅はすべて通過していたが、2023年1月~3月にかけて順次開業した。また、第2期(Phase 2)としてAgargaon~Motijheel(モディジール/ মতিঝিল )間8.4kmが2023年11月5日に開通した(途中駅は2023年12月31日までに順次開業)。第3期(Phase 3)のMotijheel~Kamalapur間1.2kmは2026年の開通を目指している。



真新しい高架軌道を行く6号線の電車。車両、施設とも日本の規格をベースとしている。

Shewraparaにて


離合する6号線の電車。全車両が川崎重工業・川崎車両製。全線開通時を見越して、2020~2023年に4M2Tの6両編成24本(144両)が製造された(Phase 2及び3開通時に必要な編成分も先に導入されている)。

Mirpur 10にて


6号線の車両外観。SUS301Lを使用した軽量ステンレス車体である(先頭部のみ鋼製)。車体側面の造形、シングルアーム式パンタグラフの形状、連結器等に日本のテイストを感じる一方、高温多湿な気候に対応するための大型の冷房装置(SIGMA(→MERAK)製)や前面のデザイン等に独特の雰囲気を感じる。車体色は6号線の緑のカラーリングを表すとともに、バングラデシュの国旗の色を意識している。先頭車の連結器は柴田式密着連結器だが、空気管が縦に並んでいるのは珍しい。

Kaziparaにて


M台車(形式:KW-221)。ボルスタレス台車で川崎重工業・川崎車両製。軸受はNTN製(車輪リムに軸受メーカー記載有)。
6号線の車両は、全中間車がM車である。


T台車(形式:KW-222)。同じく川崎重工業・川崎車両製。両先頭車はTc車である。


VVVFインバータ制御装置。三菱電機製。IGBT素子を用いた2レベルインバータである。


車両を俯瞰。先頭部には日本信号製のCBTCアンテナを2つ搭載。各車両には1台あたりの冷却能力が55.9kW(=約50,700kcal/h)の冷房装置が1両あたり2台搭載されている。冷房装置はKnorr-Bremse社傘下のSIGMA・MERAK製。


前面にはオレンジ色LEDの行先表示器と列車番号表示器が設置されている。屋根上に設置されているのは日本信号製のCBTCアンテナ。
なお、日本信号製のCBTCは「SPARCS」(スパークス)という製品名である(SPARCS=Simple-structure and high-Performance ATC by Radio Communication System)。


側面の行先表示器(オレンジ色LED)。ベンガル語と英語を交互表示する。MRT Jakartaのものと類似しているが、幅が広い。


先頭車の両側面には後方監視用のCCTVが設置されている。


車端部の車両番号表記。


妻面にある川崎車両の製造所銘板。


M2車とM4車はパンタグラフを搭載している(いずれも2基/両設置)。車体はビードレスの軽量ステンレス製(スポット溶接構造)で、幕板と吹寄板は一体化している。


シングルアーム形パンタグラフ。東洋電機製造製(反対側に社名ロゴあり)。


車内の様子。4扉車で、オールロングシート。座席はFRP製である(一人あたりの有効幅は430mm)。車内照明はLED。荷棚は省略。


ドアはステンレス製で化粧板を省略。ドアエンジンは電気式。ドアガラスは接着式で、戸当たりゴムはゴム先端にU字型の凹凸がある嵌め合いタイプである(閉扉時の気密性・防音性に優れる)。
鴨居部にはLCD装置が2台設置されている。


鴨居部のLCDの拡大。画面は18.5インチで、ベンガル語・英語の2ヶ国語で表示される。


ドアステッカー。


車端部。貫通扉の鴨居部にも18.5インチLCDが設置されている。両先頭車には車椅子スペースが設置されている。


貫通扉もドアガラスは接着式である。化粧板は省略。


車端部の窓は上段下降、下段固定の2段窓である(その他は固定窓)。


車内には1両あたり4箇所のCCTV(防犯カメラ)が設置されている。


車内の製造所名板と車両番号表記(いずれもステッカー式)。写真は第1編成(トップナンバー)で、2020年製。


2022年製の第23編成。


先頭車の車内。


運客仕切り。窓はないため前面展望は不可能。仕切り上部にもLCDが設置されている。


運転席。グラスコックピットを採用。左手操作式ワンハンドルマスコンタイプで、手前に引くと制動、奥に押すと力行(欧米式)。


6号線は全区間高架で、Uttara North~Motijheel間でUttara North駅及びAgargaon駅以外は相対式ホームである。各駅のホームは警備員が常駐。駅構内の可動ブラケットの形状も日本でよく見るものと同一である。
各駅のホームはエレベータ・エスカレータも完備している。


各駅には可動式ホーム柵(APG)が設置されている。日本信号製で、ドア開閉時のチャイムも日本で使用実績があるものである。


各駅のホームの有効長は8両。停止位置は前合わせで、後ろ2両分はホームドアではなく柵が設置されている。


各駅のホームにはLED式案内表示器が設置されている。次の列車到着までの残り時間、発車時刻、列車の両数等がベンガル語と英語で表示される。


駅名標。各駅とも共通のデザインである。駅ナンバリングはない(2023年8月現在)。


各駅のホーム先端部(相対式ホームの場合は進行方向先端部)には、無料の公衆トイレが設置されている。トイレは清掃が行き届いている。


進行方向先頭の車両は終日女性専用車。ホームの頭上には標識が掲げられている。


コンコースには発車時刻案内のLCDが設置されている(行先・番線・発車時刻を表示)。案内はベンガル語と英語で表示。


6号線の各駅のコンコースには、6号線が円借款で建設されたことを示すプレートが設置されている(ベンガル語表記のみ)。内容は以下の通り。

日本の円借款で建設
ダッカ・マス・ラピッド・トランジット開発プロジェクト(6号線)
日本とバングラデシュ人民共和国政府の協力と友好の印
西暦2022年、ベンガル暦1429年


6号線の大半の区間の高架は道路の中央部に建設された。地平の道路は自動車・CNG(三輪自動車)・リキシャ等が入り乱れ、深夜を除いてクラクションが鳴りやむことはないが、ダッカメトロはそのような喧騒の中をすいすいと走る。

Shewrapara~Agargaonにて(許可を得て撮影)

カーブを曲がってMirpur 10駅に入線する、Uttara North行きの列車。


S字カーブを行く。

Pallabiにて


Pallabi駅を発車するUttara North行きの列車。道路には客待ちのリキシャ(人力車)やCNG(三輪自動車)が溢れている。

Pallabi~Uttara Southにて(許可を得て撮影)


Pallabi駅付近を走行する列車。

Uttara South~Pallabiにて(許可を得て撮影)


Uttara South駅付近で離合する列車。


Uttara South、Uttara Center、Uttara Northの3駅は、ダッカ北部に位置するニュータウンのウットラモデルタウン内にある(Uttraの地名は「北」を意味するベンガル語のUttorに由来)。いずれの駅も2010年代に第3期として開発が始まったエリアにあり、沿線の建物は2023年5月時点ではまだ疎らである。


Uttara South駅の駅前は、2023年5月時点はまだ開発途上であった。奥には整備が終わった巨大マンション群が並ぶ。


Uttara Center駅に入線する列車。


北側の終点のUttara North駅(ウットラ・ウット駅)の外観。


Uttara North駅の駅前にはバングラデシュ初のMRT完成を祝うモニュメントが設置されている。


Uttara North駅に入線する、当駅止まりの列車。写真左奥に見えている駅はUttara Center駅。


Uttara North駅は2面4線だが、下り線の副本線は工事中であった。
当駅の北側で、Diabari Depot(ディアバリ車両基地)への出入庫線が両脇に分岐している。車両が停車している場所は引き上げ線(将来的に北部に延伸された場合は本線となる)。


信号システムはCBTC方式のATO・ATPを使用しているため地上信号は通常使用しないが、渡り線がある駅等には非常時用の地上信号機が設置されている。


Uttara North駅の北側の引き上げ線。車止めの向こうも将来的に北部への延伸を見据え、Diabari Depot(ディアバリ車両基地)への出入庫線をオーバークロスする位置まで高架が続いている。


引き上げ線からUttara North駅に入線する、当駅始発の列車。


Uttara Northの上空を飛行する、シャージャラル国際空港(Shahjalal International Airport)に着陸態勢のビーマン・バングラデシュ航空(Biman Bangladesh Airlines)。いずれもバングラデシュ国旗をイメージした緑と赤のカラーリングである。


6号線唯一の車両基地であるDiabari Depot(ディアバリ車両基地)。運行管理センターも当車両基地内にある。また、車両基地の一角にはMRTのサービスを体験できる展示・情報センターがあり、一般に開放されている模様(未取材)。

※許可を得て撮影


車両基地内のピットの中で待機している6号線の電車。当車両基地は最大18編成を収容することが出来る。また、留置線の隣には大規模検査や修繕を行う施設も併設されている。
なお、車両基地の外周はコンクリート塀で覆われており、地平からは中の様子は見えない。

※許可を得て撮影


バングラデシュ初の都市鉄道として2022年12月に開業したダッカメトロ6号線。1日中クラクションが鳴りやまない道路の上を軽快に走る。6号線は日本の支援によって整備され、車両や地上設備は日本の最近の都市鉄道に類似している。

4K Video


ダッカメトロ6号線は全駅が高架駅で、各駅には自動券売機、自動改札機、エスカレータ、エレベータ、ホームドア、LED式列車案内表示器、公衆トイレ等が完備している。自動改札機や可動式ホーム柵(ホームドア)は日本信号製が採用されており、チャイムの音が日本でも聴くことが出来るものである。

4K Video


4駅間の車内の様子、及びドア上のLCDの様子。川崎重工業・川崎車両製の4扉車で運行されている。座席はFRP製、荷棚は省略。自動放送がベンガル語・英語の2ヶ国語で流れる。
LCDは各ドアの鴨居部に2画面設置されており、ベンガル語・英語の2ヶ国語で表示される。

4K Video



「ダッカメトロ」に戻る