スカルノハッタ国際空港APM「Skytrain」

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スカルノハッタ国際空港APM(Automated People Mover)「Skytrain」はTerminal 1〜Terminal 3間4駅2.98kmを結ぶ、AGT(新交通システム)の路線である。全区間複線(2018年3月現在、単線並列として使用)で、直流750V電化。保安装置はATO・ATP、列車制御システムはCBTC(Communications-Based Train Control)である。2017年9月17日にTerminal 2〜Terminal 3間、2017年11月17日にTerminal 1〜Teminal 2間が開通した。運賃は無料。

インドネシア初のAGTの路線で、かつインドネシアの鉄道初のプラットホームスクリーンドア(PSD)完備の路線でもある。保安装置付きの鉄道路線としてもインドネシア初であるが、整備が追い付いていないためか開業時より保安装置は非稼働で、運転士による手動運転を行っている(設計上は無人運転に対応している)。

全車両が韓国の宇進産電製で、MC1-MC2(2M0T)の2両編成。開業に備えて2017年に3本(6両)、2018年アジア競技大会期間の輸送力増強に備えて2018年に同じく3本(6両)が製造された。車体はアルミ合金製(ダブルスキン構体)。車両の制御方式はIGBT素子VVVFインバーター制御(制御装置は宇進産電製)。車両寸法は長さ11,200mm×幅2,760mm×高さ3,725mm。加速度は3.5km/h/sで、営業最高速度は60km/h(2018年3月現在、保安装置非稼働のため営業最高速度は30km/hに制限)。車両番号はインドネシアの鉄道法規56号に従って付番されており、第1編成が「K1 1 17 01」-「K1 1 17 02」、第2編成が「K1 1 17 03」-「K1 1 17 04」、第3編成が「K1 1 17 05」-「K1 1 17 06」と付番されている。また2018年製の3編成については、第4編成が「K1 1 18 137」-「K1 1 18 138」、第5編成が「K1 1 18 139」-「K1 1 18 140」、第6編成が「K1 1 18 141」-「K1 1 18 142」と付番されている。なお、TIS(車両制御情報管理装置)上では第1編成を「101」-「201」、第2編成を「102」-「202」、第3編成を「103」-「203」…として区分している。

終日2両編成で運転。ただし、2018年アジア競技大会期間は4両編成で運転された。

将来的にTerminal 3〜Terminal 4〜Terminal 1を建設し、環状線とする計画がある。


(路線図:管理人制作)

インドネシア初のAPM(Automated People Mover;新交通システム)の路線となった「Skytrain」。側方案内方式のAGTである。

Terminal 3にて
Terminal 3付近を行く「Skytrain」。
全区間複線であるが、2018年3月現在は単線並列として使用しており、2本の列車がそれぞれの軌道をピストン輸送している(Terminal 2駅にて両列車がすれ違うダイヤとなっている)。運行は13分間隔(複線運転開始後は5分間隔の予定)。単線並列運転は2018年1月より開始し、それ以前は片方の軌道のみを使用して1編成がピストン輸送していた(26分間隔)。
空港の管制塔(写真左奥)と「Skytrain」。
車両外観。全車両が韓国の宇進産電製。車両規格は日本のAGTをベースに、韓国鉄道技術院(KRRI)と50余りの企業・研究機関が開発した韓国型軽量電車システム「K-AGT」を採用している。「K-AGT」準拠の車両の韓国以外での展開は当路線が初。
宇進産電が製作するAGTの営業用車両は、釜山都市鉄道4号線4000系、仁川国際空港「スターライン」の増備車に次いで当路線の車両が3例目。
各車両の屋根上にはCBTCのアンテナが横並びで2本搭載されている。ただ、2018年3月現在、システム自体が非稼働である。
2両固定編成で、定員は1編成あたり176名。
側面の車両番号表記。車両は2編成3本(6両)が投入され、車両番号は「K1 1 17 01」〜「K1 1 17 06」で付番されている。インドネシア運輸省が定めた付番ルールでは、車両形式や鉄道事業者にかかわらず車両製造年ごとの通番となっているため、「Skytrain」の車両よりも落成日が遅かった空港鉄道(ARS)の車両は、第1編成でも「K1 1 17 07」から付番されている。


※車両番号付番法則

K1  17-06
*1  *2  *3  *4

*1:車両の等級を示す。K1=Eksekutif(エグゼクティブ)、K2=Bisinis(ビジネス)、K3=Ekonomi(エコノミー)
*2:車両の種類を示す。0=客車、1=電車、2=電気式気動車、3=液体式気動車
*3:車両の導入年(西暦)を示す。17であれば2017年導入。
*4:車両固有番号。
「Skytrain」の車内の様子。扉間の座席は片側のみ設置されている。
ドア周りの様子。
ドア上(鴨居部)のLCD。
路線図。
車端部。通路脇の天井に防犯カメラが設置されている。
車端部の座席は優先席になっている。
座席のモケットの柄は優先席以外も含めて、釜山都市鉄道4号線4000系と同一の柄(元々は釜山の海とカモメをイメージしたデザイン。ただ、インドネシアにカモメは生息していないが…)。
宇進産電の製造所銘板(2017年製)と、車両番号表記。
2018年に製造された第4編成〜第6編成も、何故か2017年製表記となっている。
さらに、車内の車両番号表記が誤っている。写真は第5編成で、正しい車両番号はK1 1 18 139(車外の表記は修正されている)。
乗務員スペース。無人運転を前提とした設計のため、非常に開放的。
運転時は2名または3名が乗務している。写真左から車内放送担当、運転士、ホーム安全確認担当。
運転台。右手操作式ワンハンドルマスコンである。グラスコックピットで、モニターは2台設置されている。
マスコンは力行4段(P1〜P4)、常用制動7段(B1〜B7)と非常制動1段。手前に引くと力行、奥に押すと制動(日本式)である。マスコンの形状は近年の韓国製の電車でよく見られるもの。
その右側にある逆転ハンドルの手前には、ATO用の出発ボタンがある。ただ、現状はATO運転に対応していない。
TIS画面。「ATO/P」がオフ表示となっていることから、保安装置が非稼働であることが分かる。本来は最高速度60km/hの計画だが、安全のため最高速度は30km/hに制限されている。TISはシュナイダーエレクトリックホールディングス株式会社(旧:株式会社デジタル)製で、同社の「Pro-face」ブランドのタッチパネル表示器は韓国の鉄道車両でも高いシェアを占めている。
Terminal 3駅を発車するAPM。Terminal 3駅はスカルノハッタ国際空港第3ターミナルの2階にあり、駅付近では列車がターミナルの吹き抜けの中を走る近未来的な光景が見られる。
Terminal 3駅のホーム(ガラス張りの部分。夜に撮影)。
Terminal 3駅の軌道終端部。2期工事完成時にはこの先を延長し、環状線となる計画である。
Terminal 3駅に入線する、当駅どまりの列車。
Terminal 3駅の入口。

「Skytrain」はインドネシア語で「Kalayang」と案内されている。この「Kalayang」は列車を意味する「KA(=Kereta Api)」と、高架を意味する「Layang」を組み合わせた造語(直訳すると「高架列車」)で、「Skytrain」に該当する言葉として教育文化省国語開発育成庁が提唱した新語である(当「Skytrain」開通に伴い提唱された)。
Terminal 3駅のホーム。
インドネシア初の鉄道用プラットホームスクリーンドア。
ホームの時刻表。空港鉄道(ARS)の時刻表も合わせて表示されている。
Terminal 3駅を発車する。運輸省の規定に従い、駅出発時・入線時には必ず警笛を吹鳴する。
Terminal 3駅を発車して、Terminal 2へと向かう。後方がTerminal 3駅。
Terminal 3駅の手前、及びStasiun KA Bandara〜Terminal 1の駅間には渡り線が設置されているが、前述のとおり単線並列運転のため分岐器は使用していない。
Terminal 2駅の外観と、駅を発車するTerminal 3行きの列車。

Jakarta Airport Hotelにて(宿泊者のみ撮影可)
Terminal 2駅の周辺。スカルノハッタ国際空港第2ターミナルの建物に沿って進む。
Terminal 2駅のホーム。原則、当駅で上下線の列車が行き違うダイヤとなっている。なお、単線並列運転のため、乗車前に列車の進行方向を確認する必要がある。
Terminal 2駅に入線する、Terminal 3行きの列車。
Terminal 2駅とスカルノハッタ国際空港第2ターミナルを結ぶスカイブリッジは2019年9月17日に整備された。上写真はスカイブリッジ架設前(2018年5月)、下写真は架設後(2019年10月)の様子。
Stasiun KA Bandara(=空港鉄道駅)の外観。駅名のとおり、当駅で空港鉄道の駅(Bandara Soekarno-Hatta駅)と接続している。

※Bandara=インドネシア語で「空港」
Stasiun KA Bandaraのホーム。1面2線の構造。
Stasiun KA Bandaraに停車中のSkytrain。各駅とも警備員が多く配置されている。
ホーム上のLCDには飛行機の発着情報が表示される。
Terminal 1〜Stasiun KA Bandaraの駅間にある車両基地と、本線からの出入庫線(単線)。
開業当初の車両基地の様子(2018年2月撮影)。
拡張後の車両基地(2019年11月撮影)。立派な検修庫が整備された。
Terminal 1駅の外観。将来的にTerminal 4を経由してTerminal 3に至る環状線とする計画があり、高架終端部は将来の延伸に対応した造りとなっている。
Terminal 1駅のホーム。
Terminal 1駅に入線する、当駅どまりの列車。
総延長2.98km。ATO・自動運転機能付きだが、2018年3月現在、全列車が手動運転を行っている。保安装置を備えているものの使用せず、営業最高速度は30km/h。先頭には運転士、車内放送係、ホーム安全確認係の3人が常駐している。発車時・駅進入時には電笛を吹鳴する。

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Stasiun KA Bandara(空港鉄道駅)駅に到着〜発車する、Terminal 1行きのSkytrain。インドネシアの鉄道で初めて、全駅にプラットホームスクリーンドア(PSD)が設置された路線である。ホームには警備員が常駐している。

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