軌走天外-日本編

日本は世界有数の「軌走天外大国」、すなわち特殊な軌道上を走る乗り物の宝庫である。特に、国土の7割超が山地・丘陵地である日本では、古くから傾斜地を走行するための軌道式の乗り物が発達してきた。

1966年には世界初のラック・アンド・ピニオン駆動式(レール側と車両側の歯車を噛み合わせて走行する方式)のモノレールである「モノラック」(※1)が、日本刈取機工業株式会社(現:株式会社ニッカリ)と米山工業株式会社によって開発された。「モノラック」は物資輸送用として生まれ、その後改良を加えて乗用も開発された。現在、同様の構造のモノレールは、ちぐさ技研工業の「ちぐさモノレール」、光永産業の「コーエイモノレール」、藤井電工の「Mt.ライナー」をはじめ、複数社が参入している。工事現場等で使用されているものも多い。基本的に内燃機関を動力源とする。

1980年代からは、ラック・アンド・ピニオン駆動の自動運転の電動式乗用モノレールが本格的に開発された。その中でも、株式会社嘉穂製作所は「スロープカー」(※2)と呼ばれる乗用を主目的とした電動式モノレールを開発し、1987年2月に静岡カントリー浜岡コース(※3)に第1号を納めて以来、これまで日本及び韓国に500箇所超の納入実績がある。設置場所は公園や観光施設、さらには宿泊施設、温泉、ゴルフ場、ダム、鉱山、鍾乳洞、スキージャンプ台、寺社、墓地、学校、教会、個人宅、工事現場まで多岐に及び、現在、荷物用を含めて日本国内で約140箇所、韓国で約50箇所で稼働している。車両は最小2人乗りから最大100人乗り(50人乗り×2両)まで(※4)、両数は1~6両(※5)のバリエーションがあり、前述の「モノラック」及びそれに類するモノレールと比較して幅広い輸送力に対応している。車両もすべてオーダーメイドで、デザインの自由度も高い。なお、スロープカーのうち、吊り下げ式のものは「スカイラック」(※6)と呼ばれている。
日本国内では嘉穂製作所のほか、モノレール工業、日立造船、ちよだ製作所、及び前述のニッカリ、ちぐさ技研工業等もラック・アンド・ピニオン駆動の電動式乗用モノレールに参入していたが、現在は他メーカーの事業撤退や廃業等もあり、嘉穂製作所のスロープカーが圧倒的なシェアを誇る。
ラック・アンド・ピニオン駆動の電動式乗用モノレールで、鉄道事業法に基づいて運行しているものはない。仮に鉄道事業法に基づくと、事業路線の免許、工事認可、運賃の認可、運行計画等の国土交通大臣への届出等が必要となるが、鉄道事業法に基づいていないためこれらが不要であり、設置・運行のハードルが低いことは大きなメリットである。また、運転にあたっての公的な資格は不要である。一般的なエレベーターと同様に、乗客に操作を委ねているケースも多い。

さて、他の斜面走行用の軌道式車両としては、ケーブルカーも主流である。名前の通り、ケーブル(ワイヤーロープ)を用いて車両を牽引する方式であり、前述のモノレールが車両自体に動力を有するのに対して、ケーブルカーは車両自体には動力を有さない。鉄道事業法に基づくケーブルカーの他、鉄道事業法に基づかないものも宿泊施設、寺社、観光施設、ゴルフ場、ダム等で幅広く運行されており、施設によっては「インクライン」とも呼ばれている。後者の場合、メーカーは安全索道、日本ケーブル、CWA、大阪車輌工業、中国工業、電気興業・デンコー、太平索道、日立造船等である(一部は事業撤退済)。

さらに、エレベーターの一種である斜行エレベーターは、日本国内では1984年に花山東団地(兵庫県神戸市)に設置されたのを皮切りに、丘陵地や建物内、駅構内、地下街等に設置されている。ケーブルカーと同様、ワイヤーロープを用いてかごを牽引する方式が主流で、軌条は直線、傾斜角も原則として一定である。三菱電機・三菱電機ビルソリューションズ、日立製作所・日立ビルシステム、日本ビルテクノス等の各種エレベーターメーカーが製造・販売している。

世界広しと言えども、日本ほど斜面走行用の軌道式の乗り物の数やバリエーションが多い国は非常に稀である。

その他、傾斜地を走るものではないが、当ページでは鉱山等のトロッコや遊覧鉄道、特殊規格の各種軌道も一部取り上げることとする。なお、いずれも主として乗用(人員輸送用)のものを紹介する(鉄道事業法に基づく路線・施設か否かは問わない)。また、索道(ロープウェイやゴンドラリフト、チェアリフト等)は乗用・荷物用とも原則として除外する。

以下、設置されている地域・都道府県別に、現地の様子を紹介する。

※1:「モノラック」は株式会社ニッカリの登録商標。英語表記は「MONORACK」。
※2:「スロープカー」は株式会社嘉穂製作所の登録商標。英語表記は「SLOPECAR」。
※3:5人乗り車両。自然災害被災のため廃止済。なお、1990年に導入された松軒山公園をスロープカー第1号とする文献が散見されるが、これは誤りである(公共施設用としては松軒山公園が第1号だが、これ以前にゴルフ場と工事現場に約70箇所の納入実績がある)。
※4:日本国内向けは現時点で80人乗りが最大。100人乗りは韓国で運行。
※5:日本国内向けは現時点で4両編成が最長。6両編成は韓国で運行。
※6:「スカイラック」は株式会社嘉穂製作所の登録商標。英語表記は「SKYLUCK」(「空に掛ける幸運の架け橋」のイメージから"RACK"ではなく"LUCK"としている)。


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