マニラMRT3100形 三菱重工「MIHARA試験センター」搬入

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2021年7月、広島県三原市の三菱重工三原製作所和田沖工場内にある「MIHARA試験センター」に、マニラMRT3号線のClass 3100の3132号車(3連接車1本)が搬入され、各種試験が行われていることを確認した。

Class 3100(メーカー型式名:8MLB、マニラでの通称:「Dalian Train」)はマニラMRT3号線の輸送力改善のため、中国中車(受注時は中国北車)大連機車車輛で2015〜2017年に48ユニット(=3連接車48本。通常運行時は3ユニットを連結して走るため16編成分)が製造され、全車両が一旦マニラに納入された。車体は軽量ステンレス製で、車体構造はCKD TATRA製車両(RT8D5)に準じた片運転台の3連接車である。VVVF制御装置はドイツ・Voith(フォイト)製である(同社の制御装置はマニラLRT1号線の2G更新車でも採用)。

しかし、車両重量が規定上限の46.3tを上回る49.7tで(3.4t超過)、さらに保守施設や信号システムで互換性の問題が検出される等の多数の問題が発生し、一時は車両の返品や罰則金を求めた訴訟問題に発展した。運行は2018年から試験運行のため断続的に行われていた(2018年10月・12月、2019年1月・10月〜12月、2020年6月〜2021年5月)が、2021年5月26日からは再び全車両が営業を中断しており、問題が完全には解決されていない模様である。

2019年1月に住友商事及び三菱重工エンジニアリングがマニラMRT3号線のリハビリ&メンテナンス案件を受注している。今回の3132号車の「MIHARA試験センター」への搬入事由は公表されていないが、当案件ではMRT3号線の全システムの改修工事(軌道、架線、変電、信号、通信、車両、他)が対象と発表されており、今回の車両搬入は当案件の一環である可能性が高い。なお、MRT3号線は建設時も、住友商事及び三菱重工によってシステム一式が構築された。

日本からフィリピンに鉄道車両を輸出した例は新車も中古車両もあるが、フィリピンの鉄道車両が日本に搬入されたのは今回が初と思われる。また、中国中車製の車両が日本に搬入されることも初である。今回搬入された3132号車はマニラで営業運転に就いたこともある車両であり(Youtubeの当映像の2:32-3:02に当車両がマニラMRT3号線で営業に就いている様子が紹介されている)、中国→フィリピン→日本(→フィリピン)と渡った極めて珍しい車両である。なお、当車両もマニラでは他の2ユニットと組みあわせて3ユニットで走っていたが、今回確認されたのは3132号車のみで、他の車両は確認されていない。

※すべて敷地外より撮影

関連ページ:「マニラMRT 3号線」

広島県三原市の三菱重工「MIHARA試験センター」の鉄輪周回試験線上に現れた、マニラMRT3号線のClass 3100(8MLB)。
なお、当試験線は一周約3.2kmの周回線で、標準軌と狭軌の3線軌条とのことである。
車両の拡大。前面に「3132」の車両番号表記がある。マニラで運行されていた時と外観上の差異は特段見られない。
「MIHARA試験センター」を筆影山から望む。写真右上に3132号車の姿が確認できる。
筆影山から望む3132号車。パンタグラフを上げ、ドアも開閉する等、通電状態で何らかの試験を行っていることが確認できた。
試験を終え、車両から降りてくる作業員の方々。
車両は片運転台車で、パンタフラフが付いている先頭車(写真左)から順に3132A - 3132B - 3132Cと車両番号が付番されている(車両番号は各車体の窓下に表記あり)。
3132号車(写真下端)と、広島県三原市の街並み。試験終了後はマニラに返還されると思われるため、貴重な姿となることであろう。
「MIHARA試験センター」内に留置されている他の車両と共に。日本の東西の車両、そしてフィリピンからの来訪者が一枚に収まった。
「MIHARA試験センター」内に留置されている、元JR東日本横浜線のサハ204-105と、元能勢電鉄1500系1554F(1554 - 1504)。サハ204-105は日本に唯一残るサハ204(205系6扉車)で貴重な存在である(台車は取り外されている)。また、能勢電鉄1500系も同社からは2016年に全車両が引退しており、完全な姿(かつ走行可能状態)で残っているのはこの2両のみである(1500系は、この他に1552号車の先頭部が大阪府豊能町の吉川八幡神社に保存されている)。
2017年11月29日〜12月1日に幕張メッセで開催された「第5回鉄道技術展」に出展していた中国中車(CRRC)のブースには、Class 3100のディスプレイモデルが展示されていた。あれから3年半、まさか実車が日本に来るとはこの時は誰もが思ってもみなかったであろう。

関連ページ:「マニラMRT 3号線」

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