ミャンマー国鉄元 広島電鉄3000形

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広島電鉄3000形は、西日本鉄道(西鉄)福岡市内線から1976年に移籍した車両で、元西鉄1101形、1201形、1301形である。1101形は1954年製、1201形が1962年製、1301形が1964年製。1979年〜1982年に広島電鉄にて2連接→3連接化(中間車は元先頭車を改造したもの)をはじめ車体・電動機・ブレーキ装置等の各種改造を施し、最終的に8編成が登場した。

製造会社は日立製作所・汽車製造。車両寸法は長さ25,250mm(うち先頭車9,200mm、中間車6,850mm)×幅2,400mm×高さ3,820mm。最高運転速度は40km/h(宮島線時代は60km/h)。車体は鋼製。

後継車両(1000形)の導入により2015年に3005、3006の2編成が廃車となり、同年にその2編成がミャンマー国鉄に譲渡された(3005編成はSIV等の一部機器が広島電鉄での予備部品確保のため外され、ミャンマー国鉄へは当初より部品供出用として譲渡)。広島電鉄750形772とともに譲渡され、これらの車両がミャンマー国鉄初の電車である。なお、3005編成は3000形で唯一、編成単位で元西鉄1101形からの改造車であり、また3006編成も中間車のみ元西鉄1101形、両先頭車が元1201形から成る改造車で、両者とも3000形の中でも特徴的な編成であった(西鉄1101形は1201形・1301形よりも側窓の天地寸法が大きく、3000形に改造した際も寸法は種車のままであった)。

現地到着後、塗装変更・車両番号変更が行われたが、その他の改造はほとんど行われていない(前面にパトランプが取り付けられた程度)。先述の通り3006編成のみが営業用として整備された。ミャンマー国鉄での車両番号は3006編成が「TCE3001」(TCE3001A-TCE3001T-TCE3001B)、部品供出用の3005編成が「TCE3002」(TCE3002A-TCE3002T-TCE3002B)。TCEはTram Car Electricの略である。

電化されたヤンゴン臨港線の運用に就き、電化開業日の2016年1月10日よりTCE3001編成が営業運転を開始した。しかし、2016年6月30日をもってヤンゴン臨港線の運行が休止されたことに伴い、現在は保留車両となっている(War Dan基地に留置)。TCE3002編成は塗装は変更されたものの、シートを被った状態でWar Dan基地に留置され続けており、運用された実績はない。

広島電鉄3000形3006号改め「TCE3001」の外観。塗装はミャンマー国鉄にて水色と青のツートンカラーに変更された。また、前面の車道側(3001A基準で進行方向左側)にパトランプが設置された。
車両番号はミャンマー国鉄では3001A-3001T-3001Bで付番されており、広島電鉄時代はそれぞれ3006A-3006C-3006Bである。さらに西鉄時代の車両番号はそれぞれ1201B、1102B、1203Bで、西鉄時代は編成も製造年も異なる3両が、広電で3000形として改造時に1編成に組み合わされた経緯がある(1201B:1962年製、1102B:1954年製、1203B:1963年製)。吊り掛け駆動の抵抗制御車である。

War Dan基地にて(以下、許可を得て撮影)
上写真と反対側の3001B側から編成を見る。こちらも前面の車道側(3001B基準で進行方向右側)にパトランプが設置された。
車体裾の「西鉄福岡市内電車 昭和51年広電移籍」銘板。日本語のみの表記のためミャンマーの一般の方は読むことが出来ないものの、車体塗装時に一旦取り外し、塗装完了後にわざわざ再設置された。
TCE3001編成の車内の様子。広電時代と大きな変化はない。ヤンゴン臨港線休止後、車両はWar Dan基地に留置されており、車内には警備員が24時間常駐している。
連接部。
乗務員室背面。
運転台。
車内には至る所に広島電鉄時代の各種表記が残るが、臨港線の時刻表も追加で掲示された。
臨港線の時刻表(上写真左:ミャンマー語、下写真:英語)
当初は1日3往復であったが、後に最後の1往復が廃止され、2往復となった(廃止となった部分はテープで目張りされている)。時刻表上の所要時間は片道約40分。
広島電鉄1号線の路線図。
広島県の交通系ICカード「PASPY」の掲示。なお、PASPYのリーダー付き運賃箱自体は広島電鉄搬出前に撤去されている。
War Dan基地に留置されているTCE3002。当初から部品供出用として輸出されたもので、広島電鉄時代に既にSIV等の一部機器は外された状態で輸出された。塗装はミャンマー国鉄仕様のものに変更されている。
■日本時代の記録
広島電鉄時代の3000形3005。

皆実町六丁目にて
搬出準備のため江波車庫に回送されてきた3005。

以下、江波車庫にて(許可を得て撮影)
江波車庫で並ぶ、搬出待ちの772と3005。3005はミャンマー国鉄へ譲渡される他の2編成(3006、772)より一足早く、2015年7月13日に搬出された。
3005の車内の様子。搬出準備のため一部機器が取り外されている。
連接部。車体切り離しのため、貫通幌は撤去され、渡り板も畳まれ、ジャンパ栓も外されている。
千田車庫にてミャンマー国鉄譲渡に向けた準備が行われている3006。後日、江波車庫へ自力回送された。
千田車庫にて整備中の3006の車内。
2015年7月21日、772とともに江波車庫にて車両搬出が行われた3006。
クレーンで吊り上げられる3006A。
トレーラーに載せられて構内を移動する3006A。同じくトレーラーに載せられた772と並ぶ。
出発前の各種点検が行われる3006A。
現役車両が並ぶ江波車庫の片隅で、順に搬出される3006。
トレーラーに載せられた3006C。
トレーラーに載せられて構内移動する3006C。
他の2両(2車体)が搬出され、単車となった3006B。車両の移動はフォークリフトを用いて行われた。
江波車庫を出発する3006A。3000形は車体長が短いため日中に輸送された(772は深夜に輸送)。
江波車庫の前で広電の線路を横断する。
軌道上を行く広島電鉄800形と、道路上を行く3000形3006。25年間共に過ごした同僚と最後の別れ。

(信号待ち停車中に撮影)
広島市内の国道2号線を行く。神戸へ向けて一路東へ。
瀬野川沿いを行く。
東広島の山間部を行く。
広島県内の国道2号線沿いの「ドライブインまるかつ」に到着した3006A。この日は深夜までここで停泊となった。江波車庫出発時には曇天だった空も一気に晴れた。
トレーラーの運転手さんのご厚意で、車内を拝見。走行中の振動で、座面が外れかかっている。
シートで覆われた妻面。
外されたジャンパ栓は天井のパイプから吊るされて固定されていた。
3006Aを仰ぎ見る。これまでに西鉄、広電と50年以上活躍し、次はミャンマーへと第3の赴任先へ向かう3006Aの表情はどこか誇らしげであった。
3時間以上間隔をあけて、輸送されてきた3006B。

八本松駅付近にて
西条バイパス八本松IC方面へと曲がっていく3006B。
東広島を行く3006B。
「ドライブインまるかつ」に到着した3006B。
「ドライブインまるかつ」で顔を合わせた3006A(手前)と3006B(奥)。編成組成時は3006Cを介して背中合わせとなっているため顔を合わせることがなかった2両が並んだ。

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