JR西日本キハ58系 天津港留置

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2004年頃より、天津港保税区にJR西日本キハ58系キハ28形のキハ28 2306及びキハ28 2486が搬入され、2019年8月現在でも同港に取り残されている。

キハ28 2306(製造時車両番号:キハ28 306)は1963年東急車輛製造製、キハ28 2486(製造時車両番号:キハ28 486)は1966年日本車輌製造製(いずれも後に4VK冷房用発電装置搭載により2000番台化)。最終配置がキハ28 2306は山口鉄道部、キハ28 2486は後藤総合車両所である。両者とも2004年3月に廃車となった。

その後、天津港保税区に輸送された経緯は明らかになっていない。ただ、一説には2003年に河北省の承徳で計画されていた狭軌の観光鉄道(総延長約50km、駅数15)に使用するため、JR北海道50系客車、鹿島鉄道DD13形ディーゼル機関車2両(DD13 171・367)と共に購入された車両ではないかとのことである。この観光鉄道は承徳の紡績会社「承徳帝賢針紡」と日本のパートナー企業が合同で観光鉄道運営会社「帝賢鉄道」を設立し、市内の観光地等を結ぶ計画であった。しかし、承徳帝賢針紡の経営悪化に伴い計画中止となったため、JR北海道50系客車は譲渡のため大型発電機搭載改造をしたにも関わらず、船積み直前に計画中止のため苫小牧港で現地解体。鹿島鉄道DD13形は2003年に中国に渡った後は暫く消息不明であったが、2011年に2両のうちの1両であるDD13 367がネットオークションに出品された。この天津港に留め置かれているキハ28 2306・2486が同観光鉄道向けに購入されたという明確な証拠はないが、搬入された時期が同観光鉄道の計画中止の時期と重なっているため、何らかの関係がある可能性が高そうだ。

これら車両は搬入後、外観や内装の改造は行われず、JR西日本で廃車時の姿を留めているが、搬入から長い年月が経って外板塗装は剥がれが進み、車内も埃まみれになっている。但し、扉や割れた窓には侵入防止のための鉄板が設置され、最低限の管理はされている。

なお、キハ58系の海外譲渡例は他にロシア鉄道(極東鉄道支社サハリン地域部)、タイ国鉄、ミャンマー国鉄に譲渡例があるが、中国に渡ったキハ58系はこの2両のみである。

※一部写真・映像ご提供:「Australia and New Zealand RailFAN」
※一部写真は撮影当日許可を得て撮影

天津港の保税区(税関の監督・管理下で輸入品・輸出品が一時的に保管される場所)に留置されているキハ28 2306とキハ28 2486。
天津港保税区のゲート(写真右奥)の脇に留置されているキハ28 2306とキハ28 2486。道路からも見ることが出来る。
保税区の周囲は柵で囲われている。写真右奥の路線バスは保税区と天津地下鉄9号線東海路を結ぶ。
キハ28 2306を車両を柵越しに眺める。搬入時に使用されたと思われる吊り具も車両の脇に置かれたままである。
南北に縦列に並ぶキハ28 2306(右)とキハ28 2486(左)。キハ28 2306は急行「みよし」用の塗装(みよし色)、キハ28 2486は国鉄色である。
キハ28 2306の外観。急行「みよし」用の塗装(みよし色)を維持する、最後のキハ58系と思われる。
助士席側の乗務員扉部は鉄板で覆われている。
キハ28 2306を真正面から見る。方向幕は白幕。
車端部側。貫通路・妻窓は鉄板で覆われている。
車端部の側面。台車も設置されている。
側面の車両番号表記。
所属表記(広クチ=山口鉄道部)及び定員表記。
前面及び側面にはJR西日本のロゴ及び「WEST JAPAN」の文字が残り、一般の人でもこの車両が日本から来たことが判別できる。
妻面表記。
妻面の日本国有鉄道の所属銘板。製造所銘板(東急車輛 昭和38年)は欠損している。
側扉。タブレット保護柵設置用の穴が窓枠上部に2か所設置されているのが見える。「自動ドア」の文字や、JR西日本のドアステッカーも存置。
床下機器のカバーは一部開いてしまっている。
キハ28 2306の車内の様子。JR西日本で使用されていた時の原形を留めている。
長年の月日の経過で、座席や床には厚い埃がかぶり、座面も一部外れてしまっている。
客室端部(乗務員室側)。
客室端部(車端部側)。
優先座席周り。JR西日本時代の優先席の枕カバーが残っている。
優先座席のステッカー。
客室内の車両番号表記。
改造プレート(日本国有鉄道幡生工場 昭和44年改造)や不正乗車警告ステッカー。
非常用ドアコックプレート。
デッキ側から車内を見る。
洗面台。窓から雨水が侵入し、洗面器に雨水が溜まってしまっている。
トイレ。
JR西日本のドアステッカー。
乗務員室内。
運転台。マスコンカバーが欠落している他は部品も残っているが、埃が山積している。
前面窓のデフロスターとサンバイザー。
運転席上部。
運転席側窓下の列車無線設定位置表示。
助士席側。
キハ28 2486の外観。
破損した窓は鉄板で覆われている。
車端部側。貫通路は鉄板で覆われている。キハ28 2306よりも腐食・塗装の剥離が見られ、特に進行方向左側が深刻である。
側面の車両番号表記。
所属表記(米トウ=後藤総合車両所)及び定員表記。
キハ28 2486の前面行先表示器。方向幕が残存している。
妻面標記。塗装剥離により、かなり見えづらくなっている。
キハ28 2486は所属銘板(日本国有鉄道)及び製造所銘板(名古屋日本車輌 昭和41年)共に欠損している。
中国の天津港保税区に取り残されているキハ28、2486号と2306号。

※「Australia and New Zealand RailFAN」様(http://auandnzrailfan.zouri.jp/index.html)撮影

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