平壌市軌道電車 T3SUCS

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実車紹介 2008年にチェコのPraha(プラハ)で使用されていたT3型・T3SUCS型20両が平壌市軌道電車へ譲渡された。塗装はプラハ市電時代から変更されていない。2両固定編成で運行されており、2両目は前照灯などを撤去し、付随車扱いとしている(パンタグラフ・運転台・モーター等は存置されている)。車両番号は譲渡時に改番され、さらに2両目は遅くとも2018年までに再改番され、先頭車の車両番号から1000を引いた数字となった。
当サイト内実車紹介ページ 「平壌市軌道電車−T3型・T3SUCS型」
種車(改造元模型車両)
fineTrains 「Tatra T3 N [body]」 (「Shapeways」で購入した3Dプリントモデル)※車体のみのセット
製作数 2両編成1本(主体109(2020)年製作)
加工箇所 ・車体の塗装
・パンタグラフの設置
・車両番号インレタの貼り付け
・足回りの設置(MODEMO「東急 デハ150形 "連結2人のり" (2両セット)」+トミーテック(TOMYTEC) 鉄道コレクションNゲージ動力ユニット「TM-TR04」)
・窓ガラスの再現

■実車
平壌で活躍する、元プラハ市電のT3型・T3SUCS型。導入からしばらくはほぼプラハ時代の姿のまま使用されていたが(車両番号は変更)、その後の検査時の塗り替え等により、車体・パンタグラフの塗り分け変更、「人民のために服務する!」のスローガン表記追加、車両番号の再変更等が行われた。

松山軌道電車事業所にて
西城通りを行く、1201と201から成る2両編成。この編成をモデルとすることとする。この編成は2両ともT3SUCSである(T3とT3SUCSはバンパーの形状が若干異なり、平壌へ渡った後もその特徴を留めている)。

高麗ホテルの部屋より撮影
平壌駅前に停車中のT3SUCSの両側面を見る。
(写真は塗装変更前。仕様変更前と変更後の2つの資料写真があることが逆に仇となり、後ほど苦労することに…。仕様変更点は後述。)
2008年にプラハ市電より20両を購入したCKD TATRA製T3型電車が、プラハ時代の塗装そのままに平壌で活躍する。

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■製作した模型
「Shapeways」で購入した3Dプリントモデル。「Shapeways」は世界最大級の3Dプリントサービスで、クリエイター販売サービスもある(クリエイターが自作した3Dモデルデータをユーザーが購入すると、Shapewaysが3Dプリントしてユーザーに発送される)。
今回は、クリエイター(3Dモデラー)のczhunterさんが販売しているTatra T3のモデル(1両単位で販売)を2セット購入した。発送元住所はオランダのEindhoven(アイントホーフェン)で(同地にShapewaysの3Dプリンターがあると思われる)、航空便で輸送されてきた。発注から2週間弱で納品。
3Dプリントモデルは車体のみのセットであるため、床下機器はMODEMOの「東急 デハ150形 "連結2人のり" (2両セット)」(製品番号:NT147)が地元ホビーショップで特価で売られていたため購入し、使用することとした。
ますは車体をシンナーに漬け、サポート材の粉末や成分を除去する。写真はシンナーに漬ける前の車体(左)と、漬けた後の車体(右)。サポート材の粉末等が除去され、透明度が出てくる。
なお、シンナーに漬けすぎると車体が変形しやすいので注意(3Dプリントモデルは素材に柔軟性がないため、変形すると折れやすくなる)。
車体をブラシ掛けしたのち、下地塗装を行う。3Dプリントモデルの下地塗装に適している「造形村GKサーフェイサー・グレー」を使用(当サイトと相互リンクし、毎度お世話になっている「KH Train Factory」管理人様(橋本孔明様)から直接アドバイス頂きました。誠にありがとうございました)。
「造形村GKサーフェイサー・グレー」で下地塗装した後の車体。積層痕が目立つ箇所はやすりをかける。積層痕が残っていると塗装後に目立つため、目立たなくなるまで根気強くサーフェイサー吹き付けとやすりがけを繰り返す。
車体を塗装するにあたり、実車の塗り分けをよく分析する。
腰板の赤塗装のためのマスキング。クリームはGM鉄道カラーのアイボリーA(21番)、赤はMr.カラーのキャラクターレッドを使用した。
T3の屋根上の灰色塗装は複雑な形状をしており、側面の一部分は窓上まで灰色が伸びている。
実車写真を参考に、マスキングを行う。
屋根上塗装完了後。
ただ、完成後に気が付いたが、屋根上塗装は現行では簡略化され、窓上への延長部の塗装が省略されている(当ページ一番上の実車写真参照)。車体側面のスローガン表記を再現したいため、今回は現行仕様(2019年度時点の仕様)を再現するつもりであったが、現行仕様という意味ではエラーとなってしまった。せっかく複雑な形状で塗り分けたのを塗りつぶすのは惜しいため、過渡期ということにしておく。なお、実車のスローガン表記は当初は無く、遅くとも2018年までに追記された。
乾燥中。
パンタグラフ取り付け後(屋根にキリで穴をあけて設置)。また、1両目は前照灯部にキリで穴をあけて前照灯を再現。
床板も、T3の形状に合わせて切断する。さらに、連結器の位置も移設した。
床板・台車設置後の状態。
パンタグラフ設置後。
なお、実車のパンタグラフは当初は黄色であったが、現行では赤色に変更されている。
パンタグラフを黄色に塗装後に気づき、この後パンタグラフを赤に再塗装した。
せっかく車高を実車に合わせたが、MODEMOの「東急 デハ150形 "連結2人のり" (2両セット)」のモーター車は高さがあるため使用を断念し(著しく腰高になってしまう)、鉄道コレクションNゲージ動力ユニット「TM-TR04」を急遽追加で購入したが、それでも写真のようにモーターが車内に収まる大きさではない(手前が付随車、奥がモーター車)。もっと車高が低いモーター車が市販されていれば良いが、現状は存在しないため、模型はやむなく実車よりも少し腰高になった(車高を低くした付随車もモーター車に合わせて車高を再度調整した)。
床板設置後。
車体側面の「人民のために服務する!」のスローガンと、前面の行先表示デカールを自作。スローガンは実車を真横から撮影した写真データをベースに作成したため、書体は実車と同一である。また、自力で白文字のデカールを作成するのは非常に困難であるため、文字の周りの車体色(赤色)も一緒にプリントした。デカールを貼っても違和感がないよう、車体色部分の調色に苦労した。
車両番号再現にはGreenMaxの車両マークを使用する。ただ、既存製品に同一の車両番号はないため、書体や収録されている車両番号の内容と睨めっこして、使用する製品を選定した(この選定に相当苦労した)。
今回再現する車両の番号は1201・201、書体は阪神の車両番号表記に類似しているため(数字が縦長)、「6413 阪神通勤車・キハ04形(白色)」を使用し、番号の一部を切り出して使用することにした(8201から201の部分を切り出し。先頭車の1201は、さらに1を他の車両番号から移植)。
T3の連結器は密着連結器に類似するが、サイズが小さいため、阪神のバンドン式密着連結器を使用。連結器を捻出するためだけに、グリーンマックスの「412 阪神電車4両編成セット」(エコノミーキット)を購入した。
バンドン式密着連結器設置後(写真左)。
前面窓を取り付ける。実車は複雑な形状の曲面ガラスであるが、市販品での再現は非常に困難であるため、やむなく平面ガラスの組み合わせで再現することにした。
前面ガラス及び側面のスローガン・車両番号表記追記後。
車両後部の窓。平面に近いが、車体の形状に沿って若干曲面を描いている。
パッケージの透明プラスチック部分を切り抜いて再現した。
2両目の中間封じ込めの運転台部分。前照灯はレンズが撤去され、埋められている。一方、行先表示は先頭車と同様に表示し、前面窓下に車両番号表記もある。
上記写真の状態を再現した2両目。
完成。こちら側(公式側)から見ると、標準的なT3SUCSの模型のように見える。
非公式側から見ると、1両目側面のスローガンから平壌の車両らしさが出る(これが再現したかった)。
公式側。なお、実車の台車はインサイドフレーム台車のため、台車枠はあえて設置していない。
非公式側。側面の窓ガラス再現にはタミヤの透明プラバン(0.3mm厚B4サイズ)を使用し、逆T字窓はカッターで線を入れることで再現した。
前面。前面窓上には「万景台-平壌駅」の行先表示デカールを貼り、連結器はバンドン式密着連結器を使用。側面にはスローガン表記(スローガンは1両目のみで、2両目は表記なし。実車も同様)。
平壌地下鉄D型の模型と並べる。車体の大きさの違いが目立つ。いずれも縮尺1/160(ヨーロッパ大陸規格)。
地下電動車1号の模型も加えて、平壌の鉄道模型3並び。
「人民のために服務する!」のスローガンを加えて、ポスター風に?
ベルリン交通局(BVG)のD型、プラハ市電T3型の3Dプリンター模型(いずれもShapewaysにて販売)、及び平壌地下鉄地下電動車1号のペーパーキット(クリオコーポレーション製)を平壌で活躍している仕様で製作した。いずれも車体のみのセットで、床下機器、動力、窓、アンテナ等は他の製品を加工した(動力は鉄道コレクション向けのものを加工)。製作にあたって平壌にて数回の現地調査を行い、可能な限り忠実に再現した。

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