ソウル軽電鉄 新林線

ソウル軽電鉄 新林線(シルリムソン)はセッカン~冠岳山(クァナクサン)間11駅7.8kmを結ぶ、新交通システム(AGT)の路線である。車両基地を含めて全区間地下。全区間複線(右側通行)で、直流750V電化。全自動運転を実施している。車両基地はポラメ公園の直下にあるポラメ車両事業所で、地下にある(2017年に開通したソウル軽電鉄牛耳新設線に次いで、韓国で2番目に車両基地を含めて全区間完全地下の路線である)。2022年5月28日に現営業区間が開通した。

地上の道路に沿って建設したため急曲線が多く、鉄車輪方式ではレールとの摩擦による騒音が大きくなるため、ゴムタイヤ車輪方式となっている(韓国内でゴムタイヤ車輪方式(AGT)の路線は、仁川国際空港内の「スターライン」釜山都市鉄道4号線議政府軽電鉄に次いで4番目)。釜山都市鉄道4号線に次いで、日本のAGTをベースに韓国鉄道技術院(KRRI)と50余りの企業・研究機関が開発した韓国型軽量電車システム「K-AGT」を採用した。但し、釜山都市鉄道4号線よりも主要部品の国産化率を高め、分岐器の構造等も釜山都市鉄道4号線から仕様が変更となっている。

全列車が3両編成で運転され、各駅のホーム有効長も3両編成分のみである(新林駅等、一部の駅は4両編成分程度のホーム有効長があるが、今後の増結を見越した構造とはなっていない)。また、建設コスト削減のため乗換駅以外の各駅は出口が2箇所しかなく、冠岳山駅は1箇所のみである。

使用車両はSL000系。宇進産電製で、2020年に3M0T(Mc-M-Mc)の3両編成12本(36両)が製造された。車体はアルミ合金製(ダブルスキン構体)。車両寸法は長さ9,600mm×幅2,400mm×高さ3,500mm。設計最高速度は70km/h、営業最高速度は60km/h。加速度は3.5km/h。IGBT-VVVF制御で、制御装置は宇進産電製。

信号システムはRF-CBTC(Radio Frequency - Communication Based Train Control)方式で、韓国のLS産電が開発した韓国型無線基盤信号システム(KRTCS:Korea Radio Train Control System)を初めて採用した。Wi-FiとLTE-Rを併用して列車の位置情報を送受信し、列車間の運行間隔を制御する、世界初の信号システムである。

ポラメ公園から分岐して蘭香(ナニャン)駅までの4.1kmの蘭谷支線の建設計画があり、2026年頃の開通を目指している。分岐駅となるポラメ公園駅の構造や同駅付近の配線も分岐を考慮したものとなっている。




新林線用の車両として2020年に12編成が製造されたSL000系。3両固定編成である。前面窓の下にはハングルで「新林線」(シルリムソン)と書かれ、その下には車両番号が表記されている。

堂谷にて


ゴムタイヤ車輪方式(AGT)の長所を活かし、路線は急勾配・急曲線に富む。

ポラメにて


S字カーブを行く。

堂谷にて


ソウル大ベンチャータウン駅に入線する、冠岳山行きの列車。


書院駅に入線する、冠岳山行きの列車。ソウル大ベンチャータウン駅とほぼ同一構図での撮影が可能。


車両の側扉。両開き式で、開口幅は韓国の通勤形電車の標準幅(1,300mm)よりも狭い。


車体側面の「南ソウル軽電鉄」の表記。


車内の様子。オールロングシートで、扉間の座席は8人掛けである。各車両の車端部(貫通路付近)は車椅子・ベビーカー・大型荷物等のためのフリースペースとなっている。


ドア周り。各ドアの鴨居部にはLCD式案内表示器が設置されている。


LCDの画面。行先・次駅・路線図・ドアの開く方向等を表示する。


次駅案内では、駅の地上出口付近に設置されたCCTVからの外部映像(中継?)を表示することもある。


貫通路。各車端部にはLED式案内表示器が設置されている。


(株)宇進産電の製造所銘板(2020年製作)。


先頭部。


運転台は中央部に格納されている。前面窓は2次曲面ガラスを使用。


ソウル大ベンチャータウン駅の改札。改札口は基本的に無人である。他の軽電鉄の路線と同様、自転車・電動キックボードは携帯禁止(折り畳み自転車は折り畳んで梱包する場合に限り携帯可能)。


ポラメ病院駅のホーム。ホームドアは全駅に設置されている。


ポラメ病院駅の駅名標。韓国語・英語・中国語・日本語の4か国語表記である。


ホームドアの各扉の上部にはLCDが設置され、列車の接近情報や行先、広報ビデオ等を放映している。


駅部は開削工法、駅間のトンネルは原則シールド工法で建設されている。各駅のホームは原則として対向式ホームだが、新林駅は島式ホームのため、駅の前後で複線シールドから単線シールドに切り替わる。


ポラメ公園駅は将来的に蘭谷支線の分岐駅となるため、ホームは2面3線となっている。本線・支線の合流側となるセッカン方面は本線用ホームに加えて、蘭谷支線用のホームも既にホームドアが設置されている(但し、ドア上のLCDは準備工事)。
分岐側となる冠岳山・蘭香方面のホームは1本のみ(共用)。この構造はソウル地下鉄5号線の本線・馬川支線の分岐駅となっている江東駅と同一である。


ポラメ公園駅の蘭谷支線のホーム端から蘭香方面を眺めたところ。すぐにコンクリートの壁があり、まだ支線建設の動きは見られない。(2022年10月現在)


ポラメ公園駅の蘭谷支線のホーム端からセッカン方面を眺めたところ。こちらは既にトンネル自体は貫通しているが、軌道はまだ敷かれていない。(2022年10月現在)


ポラメ公園駅北側の、上り線側の本線・蘭谷支線のトンネル合流部。蘭谷支線側は軌道未完成。(2022年10月現在)


ポラメ公園駅南側の、下り線側の本線・蘭谷支線のトンネル分岐部。蘭谷支線側は暗闇となっているため建設状況は不明。(2022年10月現在)


ポラメ公園~ポラメ病院 間では、下り線側にのみポラメ車両事業所(車両基地)への分岐線(デルタ線)がある。上り線側は分岐はなく、下り線側からしか車両基地へアクセスできない。
ポラメ車両事業所は完全地下構造で、新林線唯一の車両基地であるにもかかわらず重整備(日本でいう全般検査)を行う設備はなく、今後も設ける計画はない。その代わり、電車1両を積載することができる特大エレベータを備えており、重整備の際はこのエレベータを通じて電車を車両基地から搬出し、外部企業に重整備を委託する予定とのことである。


各乗換駅には中間改札が設けられている。これは乗客の経路を判別するために設置されているもので、当改札機を通過しても運賃は新たに発生しない。
写真はポラメ駅のもので、中間改札の隣に出口用(入出場用)の改札も設置されている。


セッカン駅の中間改札。現地では「換乗ゲート」と呼ばれている。


セッカン駅の先の留置線。セッカン駅に到着した全ての列車は、留置線に入線して折り返す。写真の状態は、分岐器は直進側に開通している。


分岐側に開通した状態。日本の神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)のように、案内板が上下する「浮沈式」の分岐器を採用しているのが目に留まる。先に開通した釜山都市鉄道4号線では、日本でも標準的な「水平可動案内板式」を採用している。また、新林線でも前述のポラメ車両事業所との分岐部には「水平可動案内板式」を採用している(稼働率が高い分岐器のみ浮沈式を使用?もしくは、上下線の間隔が狭い渡り線の部分でのみ浮沈式を使用?)。


セッカン駅の留置線に到着した、当駅止まりの列車。


分岐器が転換すると、折り返して冠岳山行きとなる。


冠岳山駅手前の分岐器。こちらは駅の手前側に双方向への片渡り線が設置されている。


分岐側に開通した分岐器。セッカン駅のものと同様に浮沈式を採用。


冠岳山駅の先の留置線。こちらはセッカン駅とは異なり留置線部に分岐器はなく、車両の留置機能のみである。そのため、冠岳山駅に到着した列車はそのまま折り返す。ホームは相対式だが、基本的に上り線側のホームのみ使用しており、下り線のホームは原則として終電の当駅止まりの列車のみ使用している。


全自動運転を行っているソウル軽電鉄新林線の全区間前面展望(総延長7.8km)。2022年5月28日開業。ゴムタイヤ車輪方式の軽電鉄(AGT)である。車両基地を含めて全区間地下の路線である。使用車両は宇進産電製のSL000系。

4K Video


ソウル大ベンチャータウン駅に到着する、セッカン行きの列車。列車は3両編成で、ホームの長さも3両分のみ。接近チャイムはKORAIL・ソウル交通公社標準のものを使用(セッカン方面はオルゴール調メロディ)。

4K Video


書院駅を出発する、セッカン行きの列車。車両は宇進産電製のVVVF制御装置を採用している。

4K Video


日本の神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)のように、案内板が上下する「浮沈式」の分岐器を採用している。

4K Video



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