平壌地下鉄 千里馬線

Tweet

平壌地下鉄 千里馬(チョルリマ)線は復興(プフン)〜プルグンビョル(=「赤い星」の意)間8駅9.5kmを結ぶ路線である。全区間地下。全区間複線(右側通行)で、第三軌条集電方式(上面接触式)による直流825V電化(→1997年1月1日より直流750Vに降圧)。軌間は1,435mm(標準軌)。信号保安は自動閉塞式で、色灯式信号機が設置されている。また、開業時よりCTCが導入されている。車両基地はプルグンビョル駅の北の、国鉄西浦(ソポ)駅付近にある。

1973年9月6日に烽火(ポンファ)〜プルグンビョル 間、1987年4月10日に復興〜烽火 間が開通した。なお、1987年に開通した復興〜烽火 間は「万景台線(マンギョンデソン)」とも呼ばれている。万景台線区間の復興駅・栄光(ヨングァン)駅は平壌地下鉄で最も新しい駅であり、駅の内装も他の駅より豪華である。

列車は終日4両編成で運転される。運転士・車掌の2名体制で運行され、車掌も運転士と共に先頭車の乗務員室に乗務する。車両は1999年よりドイツ・ベルリン交通局(BVG)で使用されていたD型を使用しており、2016年より自国製(金鍾泰電気機関車連合企業所製)新型車両の「地下電動車1号」も運行されている。詳細は別ページにて紹介する。こちらをご覧ください。

全駅が1面2線の島式ホーム。革新線とは戦友(チョヌ)駅で接続している(地下通路で、革新線の戦勝(チョンスン)駅と結ばれている)。また、戦友駅付近には革新線との短絡線がある(目視で確認)。

復興駅から万景台方面、及びプルグンビョル駅から西浦方面への延伸計画(非営業線の旅客化?)がある。

外国人は通常、復興〜凱旋 間のみ乗車できる。なお、当管理人は特別許可を得て、2018年8月に日本人で初めて千里馬線の全区間を乗車した。


駅名の由来:
・栄光駅:平壌駅前から延びるメインストリート「栄光通り」から
・勝利駅:駅前のメインストリート「勝利通り」から
・凱旋駅:駅前にある凱旋門から
・戦友駅:駅の所在地「戦友洞」から


関連ページ:「平壌地下鉄凱旋駅−全面改修工事実施」

(路線図:管理人制作)

千里馬線の西端に位置する復興駅の駅舎。平壌火力発電所前にある。
平壌地下鉄は大半の駅が駅舎を備えている(駅舎が存在しない(コンコースが地下にある)のは、栄光駅(平壌駅側出入口)・勝利駅のみ)。1987年開業。
復興駅の改札口。奥が地下へと続くエスカレーター。エスカレーターの上には「先軍朝鮮の太陽、金正恩将軍万歳!」の文字。
平壌地下鉄のエスカレーターの大半は中国の上海電梯廠製で、同社の輸出製品のブランド名であった「SELEVA」の銘板が設置されている。
上海電梯廠製のエスカレーターは、平壌地下鉄全体で57基納入されたとのことである(1か所につき3基ずつ設置されているため、19か所に設置されていることになる)。最長のもので高低差が64mあり、当時世界記録を樹立している(なお、当時は中国国内にもこのような長大エスカレーターは存在せず、平壌地下鉄向け長大エスカレーターの開発は中国のエレベーター技術開発史の中でも大きな転換点となったようである)。
地下へと一直線に続くエスカレーター。ロシアや旧ソ連圏の地下鉄にも似ているが、壁に広告や照明はない(照明はエスカレーターの内側板内に設置)。エスカレーター長さは約110m、高低差は約60m。スピーカーからは音声が流れている。エスカレーターが地上からほぼホームの深さまで一直線で結んでいるのは、建設時にこの部分を斜坑として使用したためである。
エスカレーターは立ち止まって利用しなければならない(歩行禁止)と定められている。
朝鮮語でエスカレーターは「階段昇降機(ケダンスンガンギ)」と呼ばれる。
地下側のエスカレーター乗り場。黄色と緑に塗られた小屋はエスカレーター制御室。エスカレーターを降りたところから更に100m程進む。
通路に飾られている、製鉄所の壁画。
復興駅のホーム。復興駅は左側のホームが降車専用、右側のホームがプルグンビョル行き列車乗り場である。列車は一旦留置線に入って折り返す。ホームの深さは約70mで、アジアの地下鉄の中で最も深い。
復興駅で並ぶ、千里馬線の新旧車両。左の新型車両「地下電動車1号」は2016年1月1日より営業運転を開始した。
復興駅の降車ホーム(当駅終点の列車が発着)の壁画。平壌地下鉄の公式パンフレットには、各駅の主要な壁画の題名とサイズが紹介されている。この壁画の題名は「革新の朝」で、サイズは横24m×縦4m。
復興駅のプルグンビョル方面ホームの壁画。題名は「豊年の歌」で、サイズは横24m×縦4m。
ホーム端の壁画。題名は「労働者たちの中におられる偉大なる首領 金日成同志」で、サイズは横15.8m×縦9.25m。
ホームには当日の労働新聞・平壌新聞・文化新聞・体育新聞が掲示されており、利用客が足を止めて読んでいる。
労働新聞の記事。
栄光駅の東口(平壌駅側出入口)。栄光駅は国鉄の線路を挟んで東西に出入口があるが、こちら側はコンコースが地下にあり駅舎は存在しない。駅の入口には平壌地下鉄のシンボルマークが掲げられている。
栄光駅のコンコース(地下1階)。
栄光駅のコンコースとホームまでの連絡通路を結ぶエスカレーター。他の駅と同様にエスカレーターの長さは約100m。
栄光駅のホーム。柱には大理石や花崗岩、照明にはシャンデリアが使用され、地下宮殿とも称される。地上への階段はホーム両端にある。
栄光駅に停車中のD型(プルグンビョル行き)。
栄光駅に停車中の地下電動車1号(プルグンビョル行き)。
栄光駅の上下線のホームの壁面には、万寿台創作社による壁画が1面に描かれている。題名は「平壌の春」で、サイズは横80m×縦4m。写真は復興方面ホームで、大同江(テドンガン;平壌市中心部を南北に流れる大河)の西岸(金日成広場側)が描かれている。
栄光駅のプルグンビョル方面ホームの壁画。題名は同じく「平壌の春」で、大同江の東岸(主体思想塔側)の平壌の街並みが描かれている。
栄光駅の北城洞方面出入口への通路には金正日総書記の壁画が掲げられている。サイズは横17m×縦7.7m。この場所には元々別の壁画(題名は「白頭山天池」)が掲げられていたが、金正日総書記没後に描き替えられた模様。
栄光駅の駅名標。

栄 光 駅
←復興駅

と書かれている。
ホーム端。トンネル入口部には、前の列車が通過してからの時間がカウントアップするLED(乗務員向け)が設置されている。また、階段の下にはトイレが設けられている(復興駅も同様)。
烽火(ポンファ)駅の駅舎。1973年開業。
烽火駅のホーム。1面2線の島式ホームで、上下線のホームの間の中央の天井はアーチ状になっている。1987年に復興駅まで延伸されるまで、当駅が終着駅でった。平壌地下鉄の中で最初に開通した区間の駅のため、装飾は質素とのこと。通常、当駅は外国人観光客は乗降不可(特別許可のもと下車・撮影)。
烽火駅の柱及び駅名標。
烽火駅の壁画。
烽火駅の駅名標(復興方面ホーム。次駅は栄光駅)。
烽火駅のプルグンビョル方面ホーム。
烽火駅の駅名標(壁面)。
勝利(スンニ)駅。通常、当駅は外国人観光客は乗降不可(車内より撮影)。
統一(トンイル)駅。1面2線の島式ホーム。通常、当駅は外国人観光客は乗降不可(特別許可のもと下車・撮影)。
統一駅の壁画。朝鮮半島統一を喜ぶ人民たちの姿が描かれている。
統一駅の各柱には銅板のレリーフが飾られている。
統一駅の駅名標(復興方面ホーム。次駅は勝利駅)。
統一駅のプルグンビョル方面ホーム。
統一駅の駅名標(壁面)。
凱旋(ケソン)駅の駅舎。2019年5月1日にリニューアルオープンした。
凱旋駅のホーム(全面改修工事後)。凱旋駅は平壌地下鉄の駅の中で初の全面改修工事が行われ、ホームは明るくなり、テレビや新しい換気装置も導入された。他の駅も順次改修工事が行われる予定である。

※当駅の全面改修工事の詳細はこちらをご覧ください。
改修工事前の凱旋駅のホーム。上の写真とほぼ同じ時点で撮影したものであるが、同じ駅とは思えないほどの差がある。
戦友(チョヌ)駅の駅舎。革新線との接続駅で、同線の戦勝駅へは地下通路で連絡(戦勝駅の駅舎は凱旋通りを挟んで反対側(東側)にある)。
戦友駅のホーム。通常、当駅は外国人観光客は乗降不可(車内より撮影)。
戦友駅の駅名標(復興方面ホーム。次駅は凱旋駅)。
戦友駅は革新線との乗換駅のため、乗降が多い。
プルグンビョル(=赤い星)駅のホーム。千里馬線の北側の終着駅である。1面2線の島式ホームで、復興駅と同様に乗降ホームが分離されている。通常、当駅は外国人観光客は乗降不可(特別許可のもと下車・撮影)。
プルグンビョル駅の壁画。金日成主席の領導に従って祖国を守る人民たちが描かれている。
出口への階段。階段の上の看板は「3大革命展示館方向」と書かれている。
階段の両側には兵士(左)と製鉄所で働く人(右)の銅像がある。
プルグンビョル駅の駅名標(復興方面ホーム。次駅は戦友駅)。
降車ホーム(当駅終点の列車が発着)側の駅名標は、次駅表示がない。
復興方面ホーム。ホームの北側に留置線があり、列車は一旦留置線に入って折り返す(トンネルの向こうから、留置線に停車している車両の前照灯が見えている)。
プルグンビョル駅の駅名標(壁面)。
国鉄西浦駅付近にある、千里馬線の車両基地。営業区間が全区間地下の平壌地下鉄において、地上で地下鉄車両を見ることができる数少ない場所である。写真右端に車両の姿が確認できる。

(国鉄平義線の車内から撮影)
車両基地内に留置されているD型車両。非営業車(事業用車または部品供出車)である。
ラッシュアワーがひと段落した平日朝の復興駅に入線する、当駅始発プルグンビョル(赤い星)行き列車。

Full HD Video
朝の地下鉄の様子。ホームでは若い女性の駅員も多く活躍する。始発駅の復興駅発車時は座席が埋まるほどの乗車率。日本の地下鉄のように、乗客は皆静かに乗車している。ドアは半自動式で、開ける際は手動。

Full HD Video
会社員からスポーツ服を着た学生、観光客まで様々な乗客が行き交う地下鉄栄光駅。最後尾車両でも前照灯を点灯するのが平壌地下鉄の流儀。煌びやかなホームの屋根からはシンプルな駅名標が吊るされている。

HD Video
地下宮殿とも称される煌びやかなホームに千里馬線の上下線の列車が発着する。

Full HD Video
大勢の乗客から列車から降りてくる。当駅は国鉄平壌駅の最寄り駅で、平壌地下鉄の中でも乗降客数が多い駅である。 両ホームの壁面には、平壌の春の街並みがホームいっぱいに描かれている(万寿台創作社による作品)。

Full HD Video
プルグンビョル(赤い星)行き列車が発車する。復興駅のホームの天井にはブドウ型のシャンデリアが並んでいる。

Full HD Video
4駅間(栄光→烽火→勝利→統一→凱旋)の車内の様子。列車は60km/h程の速度で運行する。列車はオフピーク時でも5・6分間隔で運行されるが、途中駅での乗降も多く、車内はかなり混雑する。各駅には壁画が飾られている。

Full HD Video
統一駅に入線する、プルグンビョル行きの列車。平壌地下鉄の路線網は3段階に分けて建設され、当駅を含む区間は第1段階の1973年に開通した。
当駅は外国人観光客は通常降りることができないが、今回は事前に特別許可を頂いて撮影することができた。

※関係者立会いの下撮影

Full HD Video
プルグンビョル(赤い星)駅に入線する、当駅始発復興行きの列車。

Full HD Video
約2分40秒を要して、地上から地下深くまで一直線に下ってゆく。アジアの地下鉄のエスカレーターの中では、復興駅のエスカレーターが最も長い(全長約110m、高低差約60m)。地下へ着くと、さらにホームまでの通路が続いている。

HD Video
建設時の斜坑をエスカレーター空間として使用する平壌地下鉄。駅構内では常に歌や音楽、音声が流れている。

Full HD Video
平壌地下鉄各駅に設置されている電光式路線図。目的地の駅を押すと経路が光る。

Full HD Video

関連ページ:「平壌地下鉄凱旋駅−全面改修工事実施」

「平壌地下鉄」に戻る

Tweet