ブエノスアイレス地下鉄 元 名古屋市交通局5000形

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名古屋市交通局5000形は名古屋市営地下鉄東山線向けに、1980年〜1990年に23編成138両が製造された。製造会社は日本車両・日立製作所。車両寸法は長さ15,580mm×幅2,508mm(5113H以降は2,546mm)×高さ3,440mm。加速度は3.3km/h/sで、営業最高速度は65km/h。車体はアルミ合金製。電機子チョッパ制御。Tc1-M2-M1-M1'-M2'-Tc2から成る6両固定編成(4M2T)である。

予備車削減と後継のN1000形の導入により2004年より廃車が開始され、2015年8月30日をもって全編成が引退した。このうち、5103H・5112H・5115H・5121H・5122Hの5編成30両(2013年度廃車分)がブエノスアイレス地下鉄に譲渡された。

現地搬入に先立ち、1999年〜2001年に譲渡された250形・300形・1200形と同様に大阪車輌工業で改造を行い、制御方式の電機子チョッパ制御からIGBT-VVVF制御への更新、主電動機の交換、SIV装置の更新、3・4号車(M1車、M1'車)へのパンタグラフの設置及び台車の集電靴の撤去、3・4号車への簡易運転台の設置及び貫通路への開き戸の設置等の改造が施された。2015年1月に最初の1編成がアルゼンチンで水切り(陸揚げ)され、その後、同年2月と6月にも2編成ずつ水切りされた。その後、現地にてカラーリングの変更、車椅子スペースの設置、各種ステッカー類の交換、車外ブザー装置の追加、車内自動放送装置の更新、C線対応の保安装置の搭載、転落防止幌の撤去等の整備を経て2015年12月よりC線で営業運転を開始。C線では初の冷房車となった。2017年8月現在、5103H・5112H・5115H・5122Hの4編成が運用に就いている。運用開始後に車内照明のLED化が順次進められている。

関連ページ:「ブエノスアイレス地下鉄 C線」「名市交5000形 名古屋発Buenos Aires着までを追う」

2015年12月より約15年ぶりのC線向け増備車として導入された5000形。前回に引き続き、名古屋市交通局からの導入となった。C線初の冷房車両で、かつブエノスアイレス地下鉄初のアルミ合金製車体の車両である(5000形より製造年が新しい元マドリード地下鉄6000型は鋼製。また、ブエノスアイレス地下鉄発注のA・D・H線向け新型車両は軽量ステンレス製)。

Diagonal Norteにて
2015年に5編成30両が導入され、2017年8月時点で4編成24両が運用を開始している。既に5000形同士の離合も珍しい光景ではなくなった。
名古屋市営地下鉄東山線もブエノスアイレス地下鉄もシンボルカラーが偶然にも黄色のため、東山線時代と同様に黄色の帯を巻く。前面にも帯が入り、アクセントとしてドアはオレンジ色となり、よりスタイリッシュなデザインになった印象を受ける。

Diagonal Norteにて
2017年の改札口増設工事で一部が吹き抜け構造となったConstitución駅。日の光を浴びて5000形が入線する。
3号車(5300形、M1車)及び4号車(5400形、M1'車)に搭載されたシングルアーム式パンタグラフ。5000形は両車端部に冷房装置を搭載しているが、3号車・4号車は片側の冷房装置を撤去し、その空いたスペースにパンタグラフを搭載している。なお、パンタグラフ搭載車両が黄電(250形・300形・1200形を先頭とした編成)と異なっている(黄電は2号車・5号車にパンタグラフを搭載)。
パンタグラフの拡大。東洋電機製でパンタグラフ形式は「PT7128-A」。
ホームから見た、パンタグラフの設置状況。なお、車端部の行先表示器は通常無表示(白幕表示)である(東山線時代の幕自体は取り付けられたままである)。
VVVFインバータ制御装置。1C8M方式で、3号車(5300形、M1車)及び4号車(5400形、M1'車)の床下に設置されている。
VVVFインバータ制御装置の拡大。IGBT素子を使用しており、装置は東洋電機製。蓋に「VVVF INVERTER」の文字と東洋電機の銘板が入っている。
電動台車(TN-10M台車)。台車枠は再利用しており、集電靴は撤去されている。主電動機は東洋電機製の交流モーター「TDK6177-B」に交換された。
付随台車(TN-10T台車)。同じく、名古屋市営地下鉄時代はあった集電靴が撤去されている。
車端部には諸元表記がそのまま残っている。転落防止幌は台座を残して撤去された(なお、偶然にも名古屋市営地下鉄東山線の車両も可動式ホーム柵(APG)整備完了に伴い2016年に全車両で転落防止幌が撤去されている)。
5115H(現N編成)の車内の様子。車内照明がLEDに更新され、ドア上の路線図やステッカー類が交換された以外は名古屋市営地下鉄時代と大きな変化はない。5000形の特徴である、戸袋部にのみ設置された荷棚も存置されている。
3号車(5300形)に新設された車椅子スペース。車椅子固定ベルトも設置。
3・4号車間の連結面には簡易運転台が新設された。新たに貫通扉が設けられ、扉は通常閉鎖されており通り抜けできない。
日本車両の製造所名板。そのまま存置されている。
名古屋市営地下鉄(及び名鉄)の車両の特徴である、ドア脇の鏡も残存している。
多角形のランプが特徴の非常通報装置も、案内表記をスペイン語に変更したうえで使用している。
譲渡された5編成の中で最古参の、5103H(現O編成)の車内。1982年製。
車端部及び貫通路。
乗務員室仕切り。助士席側の仕切り窓はマジックミラーのステッカーが貼られているが、遮光幕自体は設置されていない。そのため、よく覗き込むと前面展望が可能である(C線の車両で初の常時前面展望可能車両である)。
禁煙表示のプレートは日本語部分の上からスペイン語表記のステッカーが貼付された。
5103Hの日本車両の製造所名板。
5103Hの運行中の車内の様子。
譲渡された5編成の中で最も車齢が新しい、5122H(現Q編成)の車内。1988年製。譲渡された5編成のうち、この編成のみ日立製作所製である(残りの4編成は日本車両製)。
8次車(5121H)以降は車端部(貫通路上・乗務員室仕切り扉上)にLED式車内案内表示器が設置されているのが特徴であったが、改造時にすべて撤去されている(装置があった場所は蓋がされている)。
5122の車両番号プレートと、日本語表記部分が目張りされた禁煙表示プレート。
6次車(5117H)以降で変更された、ドアのガラス押えの形状。譲渡された5編成の中でこの形状のものは5121Hと5122Hで使用されている。
車端部の元 優先席。モケットはそのままであるが、ブエノスアイレスでは優先席としては使用されていない。なお、ブエノスアイレスではお年寄りや体の不自由な方に積極的に席を譲る文化が深く浸透しており、この地では優先席がなくても何ら問題ないと痛感する。
何故か5122Hの日立製作所の製造所名板はすべて撤去されている。
Buenos Aires地下鉄C線で活躍する、元名古屋市営地下鉄東山線の250形267H(現H編成)と5000形5103H(現O編成)。両者は奇しくも15年ぶりに地球の反対側で再会し、再び同じ路線で活躍することとなった。

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ブエノスアイレス地下鉄では2015年に5000形5編成30両が譲渡されたが、この編成のみ日立製作所製である(残りの4編成は日本車両製)。VVVFインバーター制御に更新され、さらに名古屋市営地下鉄時代は直流600V第三軌条集電方式であったが、ブエノスアイレス地下鉄では直流1,500V架線集電方式のため改造が施された。カラーリングも一新している。C線の保安装置はATSで、打子式ATSが現役である。

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Diagonal Norte駅を発車する、元名古屋市営地下鉄東山線の5000形5112H(現P編成)。発車時には車両側よりブザーが鳴る(名古屋市営地下鉄時代のものからは換装されており、車外スピーカーも追加されている)。

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Diagonal Norte駅を発車する、5000形5103H(現O編成)と元名古屋市営地下鉄東山線の250形267H(現H編成)。ブエノスアイレス地下鉄では全列車の最後尾車両に車掌が乗務しており、ドアの開閉を行う。

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2駅間の車内の様子。名古屋市営地下鉄東山線時代と大きな変化はない。一方、制御装置は従来の電機子チョッパ制御からIGBT-VVVF制御に更新されており、走行音は大きく異なる。VVVF制御装置は東洋電機製。

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3駅間の車内の様子。車内では非公式の車内販売がやってきて、試供品を乗客を渡していく(一通り渡し終えると試供品を回収しに来るので、興味がある商品の場合のみ買えばよい)。ブエノスアイレス地下鉄での日常の光景だ。

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2駅間の車内の様子。3号車と4号車の連結面には簡易運転台が設けられ、新たに貫通扉が設けられた(改造工事は大阪車輌工業にて実施)。非常時を除いて3号車と4号車の間は通り抜けが出来ない。IGBT-VVVF制御に更新されている。

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朝ラッシュ時の車内の様子。始発駅のRetiro駅ではホーム側より発車ベルが鳴る(中間駅では車両側からの発車ブザーのみ)。Retiro駅は頭端式ホームで最後尾にのみ改札があるため、車両先頭方向に乗客が流れていく。

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ブエノスアイレス地下鉄では時折、車内パフォーマンスが行われており、出発待ちの車内に楽器演奏が鳴り響く(パフォーマンスが終わった後、気に入った人はチップを渡す)。ブエノスアイレス地下鉄らしい賑やかな光景を収めた。

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■編成別写真
N編成。
名古屋市交通局時代は「5115H」。1985年製(5次車)。
5115-5215-5315-5415-5515-5615

Diagonal Norteにて
O編成。
名古屋市交通局時代は「5103H」。1982年製(2次車)。
5103-5203-5303-5403-5503-5603

Diagonal Norteにて
P編成。
名古屋市交通局時代は「5112H」。1983年製(3次車)。
5112-5212-5312-5412-5512-5612

Diagonal Norteにて
Q編成。
名古屋市交通局時代は「5122H」。1988年製(8次車)。
5122-5222-5322-5422-5522-5622

Diagonal Norteにて

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