日本からの譲渡車両模型製作の流れ

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日本から海外へ譲渡された車両を模型で製作するうえで要となるのは、現地での改造箇所の再現である。車両の塗装だけでなく、現地独自のステッカー類や金網、スカート等も重要な要素だ。

その第一歩となるのが現地での取材である。海外の車両のデカール等は基本的に市販されていない為、自分で実物の写真を撮影し、データ化し、デカールを自作する必要がある(デカール自体は自宅のインクジェットプリンターで簡単に作成できるものも多く売られている)。車両のパーツ(金網・スカート等)もそれ用のものは当然販売されていないが、他用途の市販品を創意工夫の上で加工すれば再現は可能である。

ここでは、インドネシアのKRL JABODETABEKの車両の製作手法の一例を参考までに紹介する。

Step 1:現地での車両取材
模型化する上で重要だと思われる部分はすべて真横から写真を撮影する。2011年よりKRL JABODETABEKの大半の電車の両先頭車には女性専用車(Kereta Khusus Wanita)の派手なステッカーが施されており、模型化するうえでは欠かすことができない箇所だ。
塗り分けが複雑な部分や、特徴的な部分は特に集中的に撮影する。
Step 2:写真の加工
デカール化する写真は、必要に応じて色合い調整(明暗の均一化)を行う(左の例は単色化加工後。この後ピンク色に再着色)。
Step 3:模型の車両の分解
KRL JABODETABEKの車両は、床下機器がライトグレー、台車が黒、側窓が投石対策の飛散防止フィルム貼付けによるスモーク(黒に近い)となっている。これを再現する為、製品で異なる色合いの部分については分解の上、再塗装が必要である。写真は台車枠の塗装の為に分解した05系の台車。
Step 4:塗装
車体で塗装する部分についてはマスキングを行う。写真は先頭部の赤色の塗装の為の準備。
先頭部塗装完了後の姿。
床下機器の塗装(写真は部屋のスペースの都合上、適当な段ボールを活用して塗装している)。
窓の塗装。
Step 5:デカールの作成
、Step 1〜2によって作成した自作デカールデータを、市販の無地のデカールセットにインクジェットプリンターで印刷する。
(デカールについては、管理人はエーワン合同会社の「転写シール白地タイプ(はがきサイズノーカット)」及び「転写シール透明タイプ(はがきサイズノーカット)」を愛用している)
Step 6:デカールの貼付
印刷したデカールを車両に貼付けてゆく。水で濡らしたティッシュを用いて貼付けるタイプが多く、簡単に行うことができる。
元々側面に帯がある車両も、デカールで作成した帯を実車同様に上貼りすれば良い。
勿論腕に自信があれば塗装した方が美しく仕上げられると思うが、作業時間が圧倒的に短縮できる上、出来栄えはほとんど遜色がないレベルだ(塗装に自信がない方にはお勧めである)。8両ならば1時間程度で施工可能である。
先頭車は先述の通り女性専用車のデカールが複雑なので、慎重に貼付けてゆく。不要な部分(ドア窓部等)は貼付け後にカッターで切り取る。
デカールの貼付けが完了した状態。
Step 7:スカート(排障器)の製作・設置
市販のプラ板(写真は株式会社タミヤのプラ板0.3mm厚のもの)を切り出し・塗装の上、車両に接着剤で取り付ける。
Step 8:前面窓への投石除け金網の設置
市販の模型用金網(写真は株式会社のハセガワの「モデリングメッシュ 41 (菱形・L)」)を加工し、取り付ける。
これで完成である。
先頭車側面(女性専用車ラッピングを再現)。
中間車側面。中間の2扉付近の大きな号車番号表記、KCJ(PT. Kereta Api Commuter JABODETABEK)のロゴマークも目立つポイントである。パンタグラフの青塗装(2011年頃以降の全般検査で実施?)も再現してみた。
なお、実車は中間の2扉にステップが設置されている(両端は台車と干渉する為省略)。再現方法は今後の検討課題である。

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