LRT Palembang

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LRT Palembang(LRTパレンバン)はBandara(バンダラ)〜DJKA(デージェーカーアー)間13駅23.4kmを結ぶ、インドネシア初のLRT(軽量軌道交通)である。正式名称は「LRT Sumatera Selatan」(=南スマトラLRTの意味)、略称「LRT Sumsel」。2018年アジア競技大会の開催がジャカルタとパレンバンの共催で決定し、観客・関係者輸送を担うべく建設された。運営会社はPT. Kereta Api Indonesia Divisi Regional III Palembang(インドネシア国鉄第三事業部)。2015年10月に着工し、2018年7月23日に試験開業、2018年8月1日に正式開業した。

全区間が地上(高架)区間である。全区間複線(右側通行)で、第三軌条集電方式(下面接触式)による直流750V電化。軌間は1,067mm(狭軌)。保安装置はATS(但し未使用)。なお、第三軌条集電方式はインドネシア初採用で、かつ1,067mmゲージの路線で第三軌条集電方式を採用するのは、都市鉄道としては世界初。

車両基地はDJKA駅の南側に隣接している。

列車は3両編成で運転される。車両はPT. INKA製。2018年に3両編成8本(24両)が導入された。同社にとって初のLRT用車両製造であり、また初の第三軌条集電方式の電車である。また、アルミ合金製車両の製造も同社にとって初である。近年同社が製造した電車(KRL JABODETABEK向けKFW I-9000やスカルノハッタ空港鉄道(ARS)向け車両)はBombardier Transportation製の技術や主要装置を導入したのに対し、LRT Palembang向けの車両は中国中車の技術協力によって製造された。そのため、車両の一部の部品や機器、外板等は中国製のものを使用している。

2M1Tの3両固定編成で、編成組成はDJKA側から順にMc1-T-Mc2。車両の制御方式はIGBT素子VVVFインバーター制御(株洲中車時代電気製)。台車はボルスタレス式(PT. INKA製)で、台車の形式番号はM台車が「MB 617」、T台車が「TB 1217」。

車両寸法は長さ18,000mm×幅2,650mm×高さ3,850mm。設計最高速度は80km/h。車両番号はインドネシアの鉄道法規56号に従って付番されており、第1編成(TS-1※)がDJKA側から順に「K1 1 18 113」(Mc1)-「K1 1 18 114」(T)-「K1 1 18 115」(Mc2)、第2編成(TS-2)が「K1 1 18 116」(Mc1)-「K1 1 18 117」(T)-「K1 1 18 118」(Mc2)…と、「K1 1 18 113」〜「K1 1 18 136」の通し番号で付番されている(※TS=TrainSet)。なお、K1 1 18 以下の番号(K1 1 18 **)は2018年度製車両の通し番号である(K1 1 18 01〜96:MRT Jakarta、97〜112:LRT Jakarta、113〜116:LRT Palembang、137〜142:スカルノハッタ国際空港SkyTrain増備車)

(路線図:管理人制作)
←DJKA Bandara→
編成 Mc1 T Mc2
第1編成(TS1) K1 1 18 113 K1 1 18 114 K1 1 18 115
第2編成(TS2) K1 1 18 116 K1 1 18 117 K1 1 18 118
第3編成(TS3) K1 1 18 119 K1 1 18 120 K1 1 18 121
第4編成(TS4) K1 1 18 122 K1 1 18 123 K1 1 18 124
第5編成(TS5) K1 1 18 125 K1 1 18 126 K1 1 18 127
第6編成(TS6) K1 1 18 128 K1 1 18 129 K1 1 18 130
第7編成(TS7) K1 1 18 131 K1 1 18 132 K1 1 18 133
第8編成(TS8) K1 1 18 134 K1 1 18 135 K1 1 18 136

インドネシア初のLRT(軽量軌道交通)であるLRT Palembang。2018年アジア競技大会の開催に合わせて整備された。全区間が高架である。

Ampera〜Cindeにて
始発駅のBandara駅(Bandara=インドネシア語で「空港」の意味)の駅舎(写真奥)。パレンバン郊外にあるスルタン・ムハンマド・バダルディン2世国際空港(Bandar Udara Internasional Sultan Mahmud Badaruddin II)と連絡通路(写真右)で結ばれている。
Bandara駅の構内。頭端式ホームで、端に改札口や切符売り場がある。屋根はテフロン膜を使用。
Bandara駅は2面2線の相対式ホームで、基本的に1番線が使用されている(一部時間帯は2番線も使用)。軌道終端部にはRawie(ドイツ)製の車止めが設置されている。
軌道終端部付近から改札口・切符売り場側を見たところ。空港との連絡通路は改札を出て左側にある。
Bandara駅2番線に停車中の、DJKA行きの列車。
Bandara駅のホームに掲げられた、2018年アジア競技大会のポスターとLRT Palembangの車両。
パレンバンは元々市内の公共交通機関(路線バス等)が発達していなかったが、2018年アジア競技大会開催を契機にLRTが整備され、パレンバン市内の移動が大幅に改善された。
Demang駅を発車する、Bandara行きの列車。

Demang〜Garuda Dempoにて
Demang駅の出入口。エスカレーターと階段が整備されている。
Demang駅のコンコース。途中の小さな駅は、自動改札機が数箇所しか設置されていない。
Demang駅のホーム。各駅のホームは6両分の有効長がある。また、工期短縮とコスト削減のためか、Bandara駅を除いて各駅の駅舎の基本的な構造は同一となっている(アーチ状の屋根の柱の色は駅によって異なる)。
なお、全駅でホームドアは未設置。
ホーム上のLCD式案内表示器。
Demang駅に入線する、DJKA行きの列車。
Demang駅を発車する、Bandara行き初電。

Demang〜Garuda Dempoにて
(Demang駅に程近いAmaris Hotel Palembangに宿泊して撮影)
Bumi Sriwijaya駅に接近してくる、DJKA行きの列車。
軌間は1,067mm、集電方式は第三軌条。この組み合わせは都市鉄道としては世界初とのことである(PT. INKAのPalembang LRT紹介ビデオより。なお、都市鉄道以外では、アプト式時代の信越本線横川〜軽井沢 間等で採用実績がある)
Bumi Sriwijaya駅に停車中の、Bandara行きの列車。
DISHUB〜Bumi Sriwijaya間(Palembang Icon Mall前)の急カーブを行く。用地取得を最小限にするため、高架は基本的に道路直上に建設された。そのためカーブが多く、制限速度20km/hの急カーブも点在している。
Palembang Icon Mallから見たLRT Palembang。モールの敷地内に高架がせり出している。

DISHUB〜Bumi Sriwijayaにて
パレンバン市内の主要道路の中央に建てられたLRT Palembangの高架。

Ampera〜Cindeにて
主要駅であるAmpera駅の外観。
パレンバンのランドマークであるアンペラ橋(1962年に日本の戦後賠償で建設。元々は昇開橋)と、Ampera駅をバックに走る、Bandara行きの列車。

Ampera〜Cindeにて
Ampera橋の脇に建設された、ムシ川に架かる橋を行く。Ampera橋に合わせて橋桁は赤に塗装されている。

Polresta〜Amperaにて
終点のDJKA駅の外観。なお、DJKAとは「Direktorat Jenderal Perkeretaapian」の略称で、「運輸省鉄道総局」の意味。
安全対策のため、各駅共に列車到着間際までホームには上がれず、コンコースにて警備員(PKD)が乗客をせき止めている。

DJKAにて
DJKA駅から先は、単線で車両基地まで延びる線路(非営業線)が続いている。
車両基地へ続く線路。写真奥にDJKA駅が見える。
車両基地の建屋外観。手前は連絡線。
車両基地まで続く線路(本線)の終端部。第三軌条は何故か車両基地の手前で切れており、車両基地と本線の間はモーターカー(入換機)に連結されて移動する。
LRT Palembangの車両。全車両がPT. INKA製で、2018年に3両編成8本が製造された。LRT型車両・アルミ合金車体・第三軌条集電方式・外吊り式ドアとPT. INKAにとって新機軸を多数採用している。
Mc2車外観。
T車外観。
Mc1車外観。
車両番号等の各種表記と、床下に見えるVVVFインバータ制御装置。制御装置は株洲中車時代電気製(同社のサイトに掲載されている写真や磁励音等から判別)。
台車。PT. INKA製。集電靴はSTEMMANN-TECHNIK(ドイツ)製。
台車形式は、M台車が「MB 617」。
T台車が「TB 1217」である。
両先頭車側面には、最後尾の際に展開する板が設置されている(PT. KAIの客車やKCIの車両にも同様のものが設置されている)。
車内の様子。オールロングシートで、2扉車のためドア間の座席は15人掛けまたは16人掛けである。座席はモケット張りで、クッション性もある。
ドア周り。ドアは外吊り式で、ドアエンジンは電気スクリュー軸駆動式(駆動音が北京地下鉄の車両等と同じであるため、中国製と思われる)。
ドアの鴨居部には、3色LED式案内表示器が設置されている。次駅や停車中の駅等を表示する。
また、案内表示器の下には路線図が掲出されている(駅を示す●の色は、各駅のシンボルカラー(天井の柱の色)に合わせてある)。
車端部。
貫通路上に設置されている、LCD式案内表示器。
左側にて次駅や行先、中央で広告映像等を表示する(写真はPT. KAIのPRビデオを放映しているところ)。

また、手前には防犯カメラも設置されている。
製造会社表示ステッカー。全車両が2018年PT. INKA製。
車内の車両番号表記。
乗務員室仕切り。窓はあるが、紙で目張りされている車両が多く、前面展望できる車両は稀。
目張りの隙間からの前面展望。
運転台。マスコンは右手操作式のワンハンドルマスコンで、手前に引くと制動、奥に押すと力行(欧米式)である。
運転台向かって一番左側のモニタ(TIS画面)の下に、CRRC(=中国中車)の文字が見える。
Demang駅を発車する、DJKA行きの列車。3両はMc1-T-Mc2の3両編成。インドネシア運輸省規定で、入線・発車時には警笛を鳴動する。

Full HD Video
Demang駅に入線する、DJKA行きの列車。列車は3両編成だが、各駅のホームは6両編成分の有効長がある。

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Demang駅付近を走行する、DJKA行きの列車。Amaris Hotel Palembang(839号室)より。

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Ampera駅を発車し、PalembangのランドマークであるAmpera橋に並行して架かる橋を渡るDJKA行きの列車。

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Ampera駅を発車し、Ampera橋をバックに走行するBandara(空港)行きの列車。

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1駅間の前面展望。カーブが多く、最高速度は40km/h程度。都市鉄道としては世界初の、第三軌条方式で1,067mmゲージを採用している。

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1駅間の車窓・車内の様子。列車本数が少ないこともあり、早朝深夜を除いて多くの乗客で混雑している。

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1駅間の車窓・車内の様子。この区間はLRT Palembangで最も駅間が長く(5,590m)、駅間所要時間も10分以上かかる。途中に急カーブが存在する。空港付近では滑走路・誘導路を行く飛行機も見える。

Full HD Video
夜明け前の早朝に撮影。車内は空いている。撮影時点ではGaruda Dempo駅は未開業だったため、通過する。

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普通乗車券(表)
レシート式で、改札機にQRコードをかざして通る。
運賃はBandara駅(空港)発着がRp.10,000、それ以外の駅間がRp.5,000である。
なお、銀行発行の「e-money」(Mandiri銀行)、「TapCash」(BRI銀行)、「Brizzi」(BRI銀行)、
「Flazz」(BCA銀行)、「JakCard」(DKI銀行)も使用できる。
切符売り場
自動券売機はなく、すべて窓口で販売している。

DJKAにて
自動改札機
ターンバー式である。
自動改札機読取部
普通乗車券はQRコードを読取部にかざす。銀行発行のカードも同様。
(但し、銀行発行カードの初回利用時は、カードのアクティベーションが必要)

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