錦繍山太陽宮殿軌道電車(クムスサンテヤングンジョンゲドジョンチャ)は、金日成主席・金正日総書記の遺体を安置している錦繍山太陽宮殿(クムスサンテヤングンジョン)への訪問者の輸送のために建設された軌道電車(路面電車)の路線である。龍北洞駐車場(リョンプットンチュチャジャン)〜錦繍山太陽宮殿
間2.7km(本線総延長3.1km)を結ぶ。全区間複線(右側通行)で、架線集電方式による直流600V電化。軌間は1,000mm(メーターゲージ)。途中駅はなく、全区間が金城通りと並行している。平壌市軌道電車の路線とは完全に独立しており、管轄も異なる(当路線の管轄は朝鮮人民軍)。車両基地は錦繍山太陽宮殿の北側にあり、車両基地と本線を結ぶ0.6kmの引き込み線で接続している。 1995年7月8日の錦繍山太陽宮殿(当時:錦繍山記念宮殿)一般公開開始とともに営業を開始した。運賃は無料だが、錦繍山太陽宮殿訪問者のみが利用できる。訪問客が入場できる毎日午前中のみの運行である。 列車は2両編成で運行される。車両は元スイス・チューリッヒ市交通局(VBZ)のCe4/4型(電動車)+B4型(付随車)。1947年〜1954年に製造された車両で、スイスのSWS製。Ce4/4型・B4型それぞれ18両ずつ計36両を250,000スイスフランで購入した。車両番号はCe4/4型が101〜118、B4型が201〜218で付番されている。下2桁の番号の車両同士で編成を組んでいる(第1編成ならば101+201)。塗装は平壌で変更され、緑色を基調としたものとなった。 外国人観光客が錦繍山太陽宮殿を訪問する際は、通常錦繍山太陽宮殿停留所前の駐車場へ直接車で向かうため電動車に乗る機会は少ない。あらかじめリクエストを出せば乗車できるケースもあるようである。 錦繍山記念宮殿は金日成主席が生前に使用していた執務室の錦繍山議事堂を約8億ドルかけて改装した。内部の撮影は厳しく制限されており、入口の保管所でカメラや金属類を預けなければならない。内部には金日成主席・金正日総書記それぞれの専用列車の車両が1両ずつ(計2両)保存されているほか、生前の記念品の展示や専用のベンツ、船等も展示されている。両氏の遺体は別々の階(1階と3階)に安置されており、訪問者はそれぞれの遺体の周囲を時計回りに歩き、足元・右腕側・左腕側の3箇所で立ち止まって礼をして退室する。 |
錦繍山太陽宮殿軌道電車のCe4/4型+B4型。錦繍山太陽宮殿敷地内から撮影。場所柄、この軌道電車を撮影できる場所は非常に限られている。 | |
車両の拡大。車両は製造から60年以上が経過しているが、「主体の革命聖地」を走る車両のため非常に整備が行き届いている。前面の行先表示は「金城通り」で固定されている。 | |
錦繍山太陽宮殿停留所。写真左奥に錦繍山太陽宮殿が見える。 | |
錦繍山太陽宮殿の北側にある車両基地。 | |
錦繍山太陽宮殿の外観。内部の撮影は厳禁で、参観後に宮殿前の広場でのみ撮影ができる。宮殿内部には各国から贈られた勲章や各種遺品が展示されている。専用列車の車両も2両展示されており、書斎や大型プラズマテレビ(パイオニア製)、専用電話、足裏マッサージ機等が完備された車内の様子も車両の窓越しに見学することができる。車体の色は緑に黄帯で、台車はボルスタアンカー付きのもの。 | |
水堀と錦繍山太陽宮殿(写真左奥)。 | |
錦繍山太陽宮殿へは全長340mの2つの動く歩道に乗って移動しなければならない。動く歩道上を歩くことは禁止されている。動く歩道及び宮殿内部のエレベーター・エスカレーターはOTIS製。動く歩道やエスカレーターの踏板は赤色に塗装されている。 | |