ミャンマー国鉄ヤンゴン臨港線

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ヤンゴン臨港線はPazundaung(パズンダン)〜Pansodan(パンソーダン)〜Htaw Li Kue(トウリクゥエ)間8.9kmを結ぶ路線である。全区間が単線。既存の貨物線を活用し、2014年12月7日に旅客営業を開始した。ミャンマー語では「カンナーランRBE(=川岸通りRBE)」と称されている。Linstaung〜Htaw Li Kue間は併用軌道である。

運行系統は2014年12月7日〜2015年3月23日はPazundaung〜Pansodan間とPansodan〜Htaw Li Kue間の2系統に分かれており、前者を「RBE-A」、後者を「RBE-B」と区分。Pansodan駅で両系統を乗り継ぐことができた。途中に行き違い設備はないため、各系統で1両がピストン運行。初電と終電のみ、「RBE-B」で使用する車両の出入庫も兼ねて、Pazundaung〜Htaw Li Kue間の直通運転があり、Pazundaung〜Pansodan間は2両編成で運行された(Pansodan駅で分割・併合)。1日7往復が運転された。

2015年3月24日のダイヤ改正で、を「RBE-A」と「RBE-B」の運行区分が廃止され、全列車がPazundaung〜Htaw Li Kue間の通し運転に改められた。運行区間が長くなったが、ピストン運行であることに変わりはなかったため、1日5往復に減便された。

その後、Linstaung(リンサタウン)〜War Dan(ワーダン)間6.5kmを電化し路面電車として運行されることが決まり、2015年9月15日より一旦運行を休止。ミャンマー国鉄初の電化工事(直流600V架空電車線方式)が行われ、また電車運行に際して広島電鉄から車両譲渡と運行技術の供与(ミャンマー国鉄職員を招いての広島電鉄でのメンテナンス研修及び広島電鉄のエンジニアのミャンマー国鉄への短期派遣)が行われた。電化工事も日本のメーカーや商社が中心となって実施し、2016年1月10日より再開業した(電化工事対象外となったPazundaung〜Linstaung間及びWar Dan〜Htaw Li Kue間は運行休止)。再開業直後は当初1日3往復で運行。その後、2往復に減便された。

路面電車として再開業直後は脚光を浴びたが、利用客低迷を理由に僅か半年後の2016年6月30日をもって運行が休止された。ミャンマー国鉄では当初、臨港線を電車運行ノウハウ取得に役立て、ヤンゴン環状線等の他路線の電化に繋げたい意向であったが、運行休止によりミャンマー国鉄の電化計画にも暗雲が立ち込めている。

一時期、Htaw Li Kue〜Pang Hlaing Road〜Kemmendine間の延伸(復活)工事及び全区間の3線軌化、電化工事が予定され、一部は着工されていたが、途中で中止となった。

車両はRBE時代、元 三陸鉄道36-1200形2両(RBE3001、RBE3002)が使用された(現在は他路線にて運行)。路面電車化後は、元 広島電鉄750形、元 広島電鉄3000形で運行。運行休止となった後、広島電鉄の車両はミャンマー国鉄に電化路線が他にないため転用できず、War Dan基地で留置されている。

(路線図:管理人制作)

イギリス統治時代に建てられたミャンマー港湾公社(Myanmar Port Authority)の本社(右)の前で発車を待つ、元 三陸鉄道36-1200形36-1201のRBE3001。ヤンゴンの旧市街で織り成す、イギリス風の街並みと日本の鉄道車両のコラボレーション。

Pansodanにて
ヤンゴン港に積み上げられた海上コンテナをバックに走行するRBE3001。
なお、「ヤンゴン臨港線」は日本語での通称であり、現地では軌道が敷設されている通りの名前「カンナーラン(=川岸通り)」から「カンナーランRBE」(英語:Strand Road RBE)と称されていた。

Linstaung〜Botahtaung Pagodaにて
カンナーランの南側に沿って2011年に整備された有料道路(New Strand Road)の端に敷かれた併用軌道を自動車に交じって走行する。道路はトラックや乗用車が高速で行き交っている(道路の制限速度は20マイル(約32km/h)だが、道路の規格が良く、ほとんどの車が制限速度を守っていない)。
Linstaung〜Htaw Li Kue間約5.6kmは併用軌道で、当初は電化されていなかったため、路面電車ならぬ「路面気動車」区間であった。自動車や歩行者等の軌道内への割り込み・飛び出しも多く、列車は警笛を鳴らしながら低速で走行する。
写真奥に見える金色の塔はボータタウンパゴダ(Botahtaung Pagoda)の仏塔。

Botahtaung Pagoda〜Pansodanにて
Pansodanを発車する、Pazundaung行きの列車。

Pansodan〜Botahtaung Pagodaにて
Botahtaung Pagoda〜Pansodan間には、道路上に料金所が設けられており、その料金所の中央のゲートを列車は堂々と通過してゆく。
「路面気動車」だけでも十分珍しいが、料金所を通過する鉄道は世界広しと言えどここヤンゴンでしか見られない光景であろう。そしてそこを通過するのは日本からの譲渡車両。まさに「珍百景」だ。

Pansodan〜Botahtaung Pagodaにて
料金所通過シーンを車内から。
ボータタウンパゴダ(写真右)の横を通過してゆくRBE-A。
Botahtaung Pagoda駅。旅客化に伴い、ホームの屋根が整備された(開業時までにホーム上に屋根が整備されたのは、Botahtaung Pagoda、Pansodan、Sine Oh Dan(半完成状態)、Htaw Li Kueの4駅)。
併用軌道区間はメーターゲージと標準軌の三線軌条。
Linstaung駅。ホームも屋根もなく、ゼブラゾーンと、そこにアクセスする横断歩道のみで区別されている。同様の駅はShwedagon Pagoda Road、Maw Tin、War Danの3駅(2014年12月現在)。
白煙を上げてLinstaung駅へと近づいてくる、Pazundaung行きのRBE-A。
Pazundaung〜Linstaung間は、路地裏や緑に囲まれた軌道を行く。
Yae Kyaw駅。ホームも何もないが、駅の南側に手動踏切がある。発車の際、踏切職員が遮断棒を線路側から道路側へと90度回転させる。
Tar Wa Tain Tar駅。全く駅には見えないが、まさにこの位置(線路脇の標識付近)が乗降場である。小さな土嚢が1つ置かれているが、ほとんど用を成していない。
Yae Kyaw駅の北側でヤンゴン-マンダレー線・ヤンゴン環状線の線路と合流する。

Yae Kyaw〜Pazundaungにて
Pazundaung駅とRBE-Aの列車。Pazundaung駅は2面6線だが、ヤンゴン臨港線の列車はホームがない2線に発着する(土嚢が置かれている)。
Pazundaung駅ではそのまま折り返さず、Ma Hla Gon Locomotive Shed(マラゴン機関区)付近まで一旦引き上げる。
ヤンゴン環状線アトゥーヤター運用のキハ38形と離合する。
Ma Hla Gon Locomotive Shed手前の折り返し地点。ここで転線する(Pazundaung駅前後のみ複線)。
Ma Hla Gon Locomotive Shed手前で待機するRBE-BのRBE3002。この日は午前中、RBE-Bが運休であった。
Pansodan駅にて留置中のRBE-A。12:10〜13:30の間はPansodan駅に車両を留置し、乗務員も車両も昼休み。
同じくPansodan駅にて昼間の時間帯(11:30〜13:00)の休憩をとるRBE-B。
RBE-AとRBE-BのPansodan駅のホームは交差点を挟んで東西に120m程離れている。両区間の線路は繋がっているが、2015年3月24日のダイヤ改正までは運行が分けられ、この区間を列車が走るのは初電と終電のRBE-B列車の出入庫運用のみ(1日1往復)。
写真奥はRBE-BのPansodan駅で、写真手前側(撮影地点背後)がRBE-AのPansodan駅。
ミャンマー港湾公社本社及び税関局(写真左)と、RBE-BのPansodan駅。
RBE-AのPansodan駅から見た、RBE-BのPansodan駅(写真右奥)。
RBE-BのPansodan駅から見た、RBE-AのPansodan駅(写真左奥)。
イギリス統治時代の建物群をバックにHtaw Li Kueへと向かうRBE-B列車(車両は元 三陸鉄道36-1200形36-1206のRBE3002)。

Pansodan〜Shwedagon Pagoda Roadにて
ヤンゴン港のガントリークレーンとRBE-B列車。

Shwedagon Pagoda Road〜Sine Oh Danにて
三陸鉄道36-1200形(RBE3002)、日本からの中古バス(いすゞ・キュービック)、同じく日本からの中古車のトヨタ・プロボックス改造のタクシーが道路上で一瞬の離合。日本からの中古車の背の順横3並び。
ミャンマーの乗用車・バス・トラックは日本からの中古車が大半を占めている。

Shwedagon Pagoda Road〜Sine Oh Danにて
ホーム屋根建設中のSine Oh Dan駅付近を行くRBE-B列車。
War Dan駅付近には貨物駅がある。ヤンゴン臨港線は元々貨物線で、2014年12月7日に旅客化した。写真右の併用軌道の奥がHtaw Li Kue方面。
路面電車化後は、貨物駅の一部を改装して路面電車の車両基地(War Dan基地)となった。
朝日を前面に浴びて、Myanmar Industrial Port ターミナル1のゲート前を横断するRBE3002。
終点のHtaw Li Kue駅。
RBE-Aのサボ。
RBE-Bのサボ。
夜明けとともにPazundaung駅に入線する初電(始発列車)。RBE-B+RBE-Aの2両編成で運行される(先頭寄りがRBE-B)。
2両編成運転時の連結部。幌は接続されていない。
Pansodan駅で切り離されたRBE-A。RBE-Bの最後尾より撮影。
2015年3月24日のダイヤ改正で、を「RBE-A」と「RBE-B」の運行区分が廃止され、全列車がPazundaung〜Htaw Li Kue間の通し運転に改められた。従来、Pansodan駅付近の始発・終電の列車のみ走行した区間も、終日列車が通るようになった。
Pazundaung駅のホームは開業直後は土嚢であったが、その後乗車位置に合わせてホームが整備された。
直流600Vの架空電車線方式で電化され、2016年1月10日に再開業した臨港線。ミャンマー国鉄初の電化事業であった。
架線柱には高電圧注意を促す看板が取り付けられた。
War Dan基地前にある電車線第一号柱。ミャンマー国鉄第一号の架線柱で、柱には英語と日本語の銘板が設置されている。2015年9月に建設。
War Dan車両基地の様子。屋根付きの車庫が設けられ、車両が縦列に留置されている。
運行休止後も、車両内には警備員が24時間常駐している。

※警備員に許可を得て撮影
車両基地全景。手前が出入庫線。
始発列車にて撮影(車両はRBE3002)。ヤンゴン臨港線はPansodanを境に運行系統が東西で分かれているが、始発列車及び最終列車のみ全区間直通運行する(Pazundaung〜Pansodanは2両編成、Pansodanで分割・併合)。
Linstaung〜Htaw Li Kueは併用軌道である。自動車や歩行者に注意しながら低速で走行する。Botahtaung Pagoda駅付近では料金所を通過する。

※ミャンマー鉄道運輸省の許可及び乗務員の方々の多大なるご厚意の下撮影

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New Strand Roadの料金所を通過するRBE3001(元 三陸鉄道36-1201)。料金所の中央のレーンは列車専用で、列車通過前後に料金所の職員がバリケードを移動する。

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Pazundaung駅に入線する、ヤンゴン臨港線始発列車。通常はRBE-AとRBE-Bを繋いだ2両編成で運行されるが、この日はRBE-Bが午前中運休だったため、RBE-Aのみの単独運行であった。車両は元 三陸鉄道36-1200形36-1201(現:RBE3001)。

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ヤンゴン港に高く積み上げられたコンテナの傍らを行く、Pansodan行きのRBE3001。

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New Strand Roadの道路端に設けられた併用軌道をゆっくりと進み、終点のPansodan駅に到着するRBE3001。

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非常にトラックの交通量が多いNew Strand Roadを低速で行く、Pazundaung行きの列車。

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トラックや自動車が高速で行き交う中、道路の端の併用軌道をゆっくりと進むHtaw Li Kue行きの列車。

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Myanmar Industrial Port Teminal 1のゲート前を通過するRBE3002(元 三陸鉄道36-1206)。

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Pansodan駅前の交差点を通過する、Pazundaung行きのRBE3002(元 三陸鉄道36-1206)。

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ヤンゴン臨港線乗車券
車内にて車掌から購入する。運賃は100チャット均一。

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