ミャンマー国鉄元 JR東日本キハ38形

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キハ38形は通勤形気動車として、日本国有鉄道(国鉄)時代の1986年〜1987年に製造された車両である。国鉄の各工場(大宮・郡山・長野・幡生・鷹取)にてトイレ付きの0番台4両(キハ38 1〜4)、トイレ無しの1000番台3両(キハ38 1001〜1003)の計7両が製造された。キハ35形の改造名義となっており、台車・変速機を流用している。0番台の種車はキハ35 152・161・513・515、1000番台の種車はキハ35 153・201・516。冷房装置はサブエンジン方式で床下に設置されており、冷房能力がやや低いため扇風機も併用されている。国鉄分割民営化時にJR東日本に全車両が継承された。当初は八高線に導入され、1996年の八高線の高麗川以南電化、高麗川以北のキハ110系化後は全車両が久留里線に転属した。車両寸法は長さ20,000mm×幅2,803mm×高さ3,955mm。最高速度は95km/h。車体は鋼製。

2012年12月1日よりキハE130形100番台が久留里線で営業運転を開始し、同日付で全車両が引退した。廃車となった7両のうち、5両(キハ38 2〜4,1001,1002)がミャンマー国鉄へ譲渡された(その他、キハ38 1が「いすみポッポの丘」で静態保存、キハ38 1003が水島臨海鉄道に譲渡され、全車両とも解体を免れた)。

ミャンマー国鉄譲渡車は現地到着後、ドアへのステップ・手すりの設置、車軸の改造、屋根上のベンチレーターの撤去等の改造が施された。塗装はJR東日本時代から変更されていない(前面貫通扉の黄色塗装のみ、車体色と同一の白に改められた)。自動ドアも従来のRBEでは機能停止しているが、キハ38形では初めて自動ドア機能が活かされている。現地の車両番号は、JR東日本時代の若番から順にRBE25101〜25105で付番されている。

2014年8月16日より営業運転を開始した。営業開始後はヤンゴン環状線で運賃300チャットのアトゥーヤター(アトゥー:特別、ヤター:列車)として運行され、自動ドアは常時使用されていたが、2016年5月9日より冷房の使用を中止し運賃を200チャットに値下げ、さらに2016年7月1日より環状線の全列車の運賃が100チャットに値下げされた。また、2014年11月よりミャンマービールのラッピング広告が施されている。

【新旧車両番号対照表(JR東日本時代→ミャンマー国鉄、の順に表記)】
キハ38 2:RBE25101
キハ38 3:RBE25102
キハ38 4:RBE25103
キハ38 1001:RBE25104
キハ38 1002:RBE25105

ヤンゴン環状線を行く、Yangon行きのキハ38形「アトゥーヤター」。全車両ともミャンマービールのラッピング広告が施されているが、RBE25101(キハ38 2)を除いて前面にはラッピングは施されていない。編成は時折組み替えられており、最大5両編成で運行されるが、検査や修理などの際は当該車両を抜いて残りの車両で運行される(写真はRBE25105を抜いた4両編成)。

Lan Ma Daw〜Pha Yar Lanにて
車体はJR東日本時代(2代目久留里線色)のままだが、貫通路の色は黄色から白色に変更されている。いすみ鉄道200'形がミャンマー国鉄導入直後の整備時に車体色を黄色からクリームと赤のツートンカラーに変更されたところを見ても、黄色を車両に使用することは、ミャンマー国鉄であまり好まれていないのかもしれない。

Pha Yar Lan〜Lan Ma Dawにて
DRC(Insein)で冷房整備を受けるRBE25105(キハ38 1002)。
車両前面にはラッピングが施されていないため、真正面から見ると久留里線時代のようだ。行先表示器部には「久留里線」の表示も残存している(RBE25101・RBE25104は「(ga)アトゥーヤター」表記に変更)。
前面を含めてミャンマービールのラッピング広告が施されたRBE25101。前面は緑色となり、印象が異なる。行先表示器部には「(ga)アトゥーヤター」のステッカーを貼付。
Pha Yar Lan駅に停車中のキハ38形。線路を跨ぐShwedagon Pha Yar Lan(シュエダゴンパヤー通り)を元 仙台泉観光バス(塗装から察すると、更にその前は千曲バス所有?)のセレガが横切る。
白煙を上げて加速する、ヤンゴン環状線時計回り運用の「アトゥーヤター」。

Pha Yar Lan〜Lan Ma Dawにて
通常の5両編成で運行されるキハ38形。

Mahlwagonにて
ヤンゴン環状線の客車列車と離合する。

Pazundaungにて
ヤンゴン環状線の東側を行く、時計回り運用の「アトゥーヤター」。

Payat Seik Gonにて
ミャンマーらしい風景の中に溶け込む、第3の人生を歩み始めたキハ38形。

Lan Ma Daw〜Pha Yar Lanにて
ヤンゴン環状線の高さ方向の建築限界は3,600mmのため、道路橋のアンダーパスはギリギリである。屋根上のベンチレーターはミャンマーで撤去された(冷房装置は床下搭載のため、低屋根化改造は行われていない)。
撤去された屋根上のベンチレーター。
Insein駅を発車する。
夜のYangon駅に停車中のキハ38形。
Yangon駅にてキハ181形と並ぶ。
行先表示器部に残存する「久留里線」の表示。
新設されたインテーク(空気取入口)。車体色に合わせて塗られている。
エンジン。新潟鐵工製。
台車。新製時よりキハ35形からの発生品を使用している。ミャンマー国鉄で設置されたドアのステップは、台車との干渉を避ける形状となっている。
妻面。
各種表記類も残存している。
JR東日本の銘板。
RBE25101(キハ38 2)の車内の様子。
RBE25102(キハ38 3)の車内の様子。
RBE25105(キハ38 1002)の車内の様子。全車両の窓の上半分には冷房効果を高めるために遮光フィルムが貼られている。
座席。キハ38形独特の形状であるバケットシートは残存している。
ドア。半自動機能は使用しておらず、ドアボタンは隠蔽されている。各乗降口のステップの中央には手すりが設置された。
キハ38 3の車端部。キハ38形はオールロングシートだが、0番台車のトイレ前のみボックスシートである。トイレは久留里線転属時に閉鎖されており、ミャンマー国鉄でも閉鎖されている。
優先席表示。JR東日本のデザインをベースに、ミャンマー語仕様のものが新調された。この表示はJR北海道キハ40系等にも波及している。
キハ38 2の車両番号表記。
キハ38 3の車両番号プレート。その他にも各種日本語表記が残っている。
乗務員室仕切り。客室側からは路線図、乗務員室側からは新聞紙等で目張りされている。
乗務員室側から見た仕切り。ロールカーテンは残存しており、仕切り戸のプリーツカーテンは撤去された。
運転台。JR東日本時代と大きな変化はない。
Yangon駅(ヤンゴン中央駅)を発車する、環状線時計回り「アトゥーヤター」運用のキハ38形4両編成。

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前面の「久留里線」の表示そのままにヤンゴン環状線を行くキハ38「アトゥーヤター」。

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ミャンマービールの全面ラッピングが施されたキハ38。白煙を上げてPha Yar Lan駅を発車する。

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Insein駅を発車する、環状線時計回り「アトゥーヤター」運用のキハ38形5両編成。

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キハ38はミャンマー国鉄で初の自動ドア常時使用車両である。Yangon駅(ヤンゴン中央駅)では、飛び乗る乗客を考慮してか加速中にドアを閉めることが多い(Yangon駅では発車する列車に飛び乗る乗客を頻繁に見かける)。

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夜のYangon駅にてキハ181の隣に入線する、当駅折り返しのキハ38「アトゥーヤター」。

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1駅間の車内の様子。ドアはミャンマー国鉄初の常時自動開閉(半自動機能は使用していない)。車内には至る所に日本語表記が残る。エアコンと共に扇風機を併用。窓の上半分には冷房効果を高めるために遮光フィルムが貼られている。

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ヤンゴン環状線で「アトゥーヤター」運用に就く、キハ38 2の乗務員室より撮影。Panhlaing Roadを出て左手よりヤンゴン臨港線の線路と並行し、Kyeemyindine駅手前まで三線軌条が続いている。また、Hanthawaddy駅手前で元JR西日本キハ181系と離合する。

※ミャンマー鉄道運輸省の許可及び乗務員の方々の多大なるご厚意の下撮影

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■日本時代の記録
久留里線で活躍していた頃のキハ38 2+キハ38 1003。キハ38 2はミャンマー国鉄へ、キハ38 1003は水島臨海鉄道へ譲渡された。久留里線では最大4両編成で運行された。

祇園〜木更津にて
キハ38 3+キハ37 1003の2両編成。キハ38 3はミャンマー国鉄へ、キハ37 1003は水島臨海鉄道へ譲渡された。

木更津〜祇園にて
幕張車両センター木更津派出の機関庫に並ぶ、キハ30 98、キハ38 3、DE10 1752。

木更津にて
キハ38 4。現:RBE25103。

木更津にて
キハ38 1001(現:RBE25104)+キハ38 4(現:RBE25103)。

久留里にて
キハ30 100とキハ38 1001(現:RBE25104)。

横田にて
木更津に並ぶ、久留里線の各形式の車両(キハ30形+キハ37形、キハ38形2編成)。
キハ38 1002とキハ30 100がペアを組む。現在はキハ38 1002はミャンマー国鉄で(RBE25105)、キハ30 100は水島臨海鉄道で活躍する。
側面の久留里線のステッカー。ミャンマー国鉄での整備時に撤去された。
キハ38 1001の車内の様子。

上総亀山にて
軽量化を図ったバケットシート。キハ38形は国鉄で初めてバケットシートを採用した車両である。
ドア周り。
キハ38 4の車端部。右側はトイレ(閉鎖済み)。
トイレ前のボックスシート。こちらもバケットタイプである。
乗務員室仕切り。
横浜市の大黒埠頭で船積みの時を待つキハ38形5両。郡山総合車両センターより2012年12月末に陸送され、1年以上同埠頭で待機。2014年4月に船積みされ、ミャンマーへと渡った。

2013年11月 敷地外より撮影
輸出車の波に呑まれるキハ38形。
台車を履いた状態で留置されていた。長期間の港湾内留置により車体が黒ずんでしまっているが、ミャンマー国鉄ではピカピカな姿で蘇った。
2012年12月1日まで久留里線で活躍していたキハ38形。現在、この映像のキハ38 2+キハ38 1003のうち、キハ38-2はミャンマー国鉄に譲渡された。キハ38 1003は水島臨海鉄道へ譲渡されている。

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