平壌市軌道電車 統一181型

Tweet

「統一181」(トンイル181)型は2018年に登場した、平壌市軌道電車で27年ぶりの新造車両である。3連接車で、2018年7月に1次車1編成、同年12月に2次車2編成の計3編成が製造された。2019年7月現在、松山軌道電車事業所に2編成(1003号車・1004号車)、楽浪軌道電車事業所に1編成が所属している(前者は1号線、後者は3号線で運用)。2018年8月4日付の朝鮮労働党中央委員会の機関紙「労働新聞」にて初めて存在が公表された(金正恩朝鮮労働党委員長の車両視察報道が同紙に掲載された)。

1991年に製造された試作車「青年前衛」号ぶりの自国製車両で、かつ自社発注の軌道車両としても同年ぶりである(「青年前衛」号は試作車であり、量産車としての自国製造は当車両が初)。車両は平壌市にある「バス修理工場」製。平壌市軌道電車初の交流モーター(国産の非同期電動機)を採用した車両であり、制御装置・車輪・連結部の幌・窓ガラス・サイドミラー・床ゴム板・化粧板・座席等の各種機器・部品も大半が国産化されているとのことである。行先表示器も初めてLED式が使用され、前面・側面に設置されている他、車内にもLED式の行先案内表示器が設置されている。運転台は編成両端に設置(通常は片側の運転台のみ使用)。なお、冷房装置は設置されていない。

2018年8月18日付の労働新聞によると、2018年1月末、金正恩朝鮮労働党委員長より軌道電車を自らの力で生産しなければならないとの指示があったが、これまで朝鮮で軌道電車の車両を1から作った実績はなく、さらに技術的な問題、生産に必要な材料、資金、労働力も不足しており、設計・製造は困難を極めたとのことである。しかし、首都旅客運輸局とバス修理工場の幹部・労働者階級が一致団結し、さらに軌道電車の車両の修繕の経験が豊富な松山軌道電車事業所・紋繍軌道電車事業所・楽浪軌道電車事業所の幹部と技能工をプロジェクトメンバーに追加して、朝鮮民主主義人民共和国建国70周年(2018年9月9日)までの完成死守を掲げて設計・製造が進められた。

研究・各種試験の末、モーターは軌道電車の特性を考慮して自国製の非同期電動機を採用し、制御装置・制御プログラムの開発は平壌運輸技術研究所が行った。また、技術的に解決困難だったのは片制動装置とレールブレーキ装置の開発で、数百点の部品から成る新製品の開発試験が連続で失敗すると、完成期日が差し迫っているため古い軌道電車の部品を改修して利用する案も提起されたが、旅客運輸部門の幹部がこれを許可せず、決死の努力の末、最終的に自力開発に成功したとのことである。設計から完成に至るまで僅か半年程度で完遂しており、労働新聞は奇跡と称えている。

車両番号は2018年8月時点では付番されていなかったが、2次車製造までに付番され、車両前面及び側面に追記された。

1次車と2次車の仕様の主な差異は以下の通り(2019年7月現在)
1次車 2次車
落成時期 2018年7月 2018年12月
製造編成数 1 2
号車番号 1003 1004・3073
所属 松山軌道電車事業所 松山軌道電車事業所
楽浪軌道電車事業所
運行路線 1号線 1号線
3号線
ドア設置側 両側 片側(進行方向右側のみ)
編成内パンタグラフ数 2 1
パンタグラフ形状 菱形 シングルアーム
サイドミラー配色
その他 片側扉のため、座席配置・座席数が1次車と若干異なる
前面形状・前面下部の塗分け位置が1次車と若干異なる
乗務員室内の機器・配電盤の配置・形状が1次車と若干異なる

首都旅客運輸局によると、さらに増備する計画があるとのことである。

※すべてガイド(案内員同志)立会いの下で撮影。

2018年8月に公式にお披露目された、27年ぶりとなる新型車両。型式名は「統一181」(トンイル181)。大半の部品が国産化されている。前面は前照灯の上のブラックフェイスとの境目部分の外板に屈曲がある複雑な形状で、前面窓も曲面ガラスを用いる等、精密加工が求められるデザインであるにもかかわらず、非常に美しい仕上がりとなっている。加工精度の高さを感じる。前面の銀色のエンブレムは「千里馬」をデザインしたもの。
なお、写真は試運転時のもので、車両番号表記がないが、後に前面・側面に車両番号表記が追加された(後述)。
正面がちに見た、統一181型。車体形状も塗装も従来の車両と大きく異なり、近代的な外観となっている。また、外観だけでなく、省エネ化のために自国製の交流モーター(非同期電動機)を採用する等の技術革新も図られている。車両の乗り心地や騒音も既存車両と比べて大幅に改善されているとのことである。
前面にはLED式行先表示器が採用され、写真は「万景台①平壌駅」と表示されている。(①は路線番号)
光復通りで試運転を行う統一181型。
統一181型を側面から見る。3連接車で、運転台とパンタグラフは編成両端に設置されている。各車端の側窓は五角形(下側の窓枠が斜め)を描いたユニークな形状。側窓は車端部を除いて開閉可能(横引き窓)。
また、各車体の両端部には、窓下の赤帯内に側方灯が設置されている(常点灯)。
先頭部。台車やパンタグラフが観察できる。低床車ではなく、ツーステップ車両である。
連接部。貫通幌も自国製を使用。台車はKT8D5K型に類似しているが、レールブレーキ装置や電動機は自国製のものを採用している。
最後尾の先頭車両(平壌市軌道電車の終端部はループ線となっているため、最後尾車両の運転台は基本的に使われない)。
それぞれの先頭車の右側面には、LED式の行先表示器が設置されている(LED式行先表示器は平壌市軌道電車で初採用)。
側面の行先表示の拡大。一定時間固定表示後、横に文字がスライドするアニメーション機能がある(下写真及び本ページ下部の動画ご参照)。
写真は「万景台→平壌駅」と表示されており、矢印の向きが一方向であることから、終点では表示が切り替わる(と思われる)。
光復通りのスローガンが書かれた看板の前を行く統一181型。通常は使用しない分岐器を切り替えるため、試運転列車の乗務員が降りて分岐器を切り替えている(光復通り東端の折り返し線に入れるための措置)。
右から迫り来るバス。このバス、南(朝鮮)のどこかで見たことあるような、ないような?
ポイントを切り替えて、通常の営業列車では走行しない折り返し線を進む統一181型。
行き交う1号線の既存車両(KT8D5K型)と並ぶ統一181型(写真右端)。平壌のランドマークである柳京ホテル(建設工事進行中)も写真左奥に見える。
折り返し線(ループ線)を進んで、方向転換してきた統一181型。万景台(松山軌道電車事業所)方面へと向かう。
道路を跨ぐ写真奥のガーター橋は国鉄平南線のもの。
光復通りの勾配を上る。
営業列車の通過待ちをする、統一181型の試運転列車(写真左奥)。
警鈴(フートゴング)を鳴らしながら迫り来る統一181型。
車内の様子。クロスシートで、座席配置は1人掛け+2人掛け。
車内にもLED式行先表示器が設置されている(車外用の行先表示器の直上)。
後追い。1号線の本線と左から合流する。
営業列車の後を追って、千里馬の如く走り去る統一181型。
営業運転開始後の姿(2019年7月撮影)。前面及び側面に車両番号表記が追加された。運転台には

敬愛する最高領導者 金正恩同志が
乗られた軌道電車

主体107(2018)年8月3日


と書かれた金色の記念プレートが掲げられている。
カルリムギル電停に停車中の、万景台行きの統一181型。ドアが開くと学生たちが降りてきた。
2018年12月に製造された、2次車の1004号車。1次車(1003号車)と比べて、ドアの片側化、パンタグラフのシングルアーム化、パンタグラフの1基化等の仕様変更が行われている。前面形状(ブラックフェイス部と境界)も僅かに変更されている。
西城通りを行く1004号車。
光復通りを行く1004号車。出退勤時間帯は多くの自転車が行き交う。
光復通りの西端を行く1004号車。平壌市軌道電車唯一の地下区間(アンダーパス)へと進んで行く。
松山軌道電車事業所に入庫する1004号車。
光復通りにて試運転を行う、2018年製の新型軌道電車。前面行先表示は「万景台①平壌駅」と表示されており(①は路線番号)、側面は「万景台→平壌駅」をスライド表示する。映像冒頭で警鈴(フートゴング)を鳴らしている。
平壌市軌道電車初の交流モーターを採用した車両であり、制御装置・車輪・連結部の幌・窓ガラス・サイドミラー・床ゴム板・化粧板・座席等の各種部品も大半が国産化されている。
車両はバス修理工場製。

Full HD Video

「平壌市軌道電車−車両紹介」に戻る

Tweet