平壌地下鉄 D型

Tweet

D型はドイツ・ベルリン交通局(BVG)で使用されていた車両で、1956年〜1965年に2両編成115本(230両)が製造された。ドイツのOrenstein und Koppel(O&M)製及びDeutsche Waggon und Maschinenfabriken(DMW)製。片側3扉で、車内はオールロングシート。車両寸法は長さ15,550mm×幅2,650mm×高さ3,425mm。最高速度は70km/h。抵抗制御。全ての車両が片運転台の制御電動車(Mc)。D型という型番にちなんで、鉄道愛好者の間では「Dora(ドーラ)」とも呼ばれている。

平壌地下鉄には2両編成108本(216両)が譲渡され、1999年より運行されている。現在、営業用車両はすべて4両編成(2+2両、Mc-Mc+Mc-Mc)で運行されている。車両番号は701から付番されており、編成内の番号は通しとなるよう組まれている(第1編成は701-702+703-704)。編成を組み替えることは基本的になく、各編成の中間2両(元先頭車)は前照灯が撤去されている。最大「901-902+903-904」で組成された編成まで確認できたため、少なくとも51編成(204両)は整備されたようである。平壌地下鉄譲渡後に、塗装の変更(黄色一色塗装→薄緑・赤・緑の3色塗装)、先頭車屋根上への列車無線アンテナの設置、前面行先表示器の撤去、車内車端部への金日成主席・金正日総書記の肖像画の設置等の改造が行われた。ドアは半自動(開けるときは手動、閉まる時は自動)である。2014年頃より、一部の車両にLED式案内表示器が追加設置されている。

千里馬線・革新線の両線で運行されている。

関連ページ:「【鉄道模型】平壌地下鉄−D型」

ドイツ・ベルリン交通局(BVG)より購入し、1999年より平壌地下鉄で活躍しているD型。現在、平壌地下鉄は千里馬線・革新線の主力車両として運行されている。写真は革新線のD型。
アジアの地下鉄・都市鉄道で元ヨーロッパの地下鉄車両を運行しているのは平壌地下鉄のみである。当車両はベルリン交通局(BVG)には2両編成2本が残るのみである。当車両を追い求めて平壌を訪れるドイツ人の鉄道ファンもいるのだとか。

建設にて
上から見たD型。先頭車の屋根上には、大きな列車無線アンテナが1組または2組設置されている。

建設にて
台車及び車両側面。第三軌条集電方式で、運転台寄りの台車が集電靴付き(写真は集電靴なしの台車)。

建設にて
ドアは半自動式で、開ける時は手動である(閉まる時は自動)。

光復にて
駅到着時にドアのロックは両側とも解除される模様。建設駅では保安員がホームと反対側のドアを開けて換気(?)している姿も見ることが出来た。
なお、当然ながら一般の乗客がホームと反対側のドアをみだりに開けることは禁止されている。

建設にて
千里馬線のD型。革新線のものと同一仕様である。

凱旋にて
第1編成の701-702+703-704。車両は製造から50年以上経過しているが、どの車両も綺麗に整備されている。

復興にて
LED照明を受けて輝く車体。連結器は密着連結器で、下に電気連結器を備える。

凱旋にて
先頭車には運転士と車掌が乗車し、先頭よりドア操作を行う。運転台は右側にあり、平壌地下鉄は革新線建設駅を除くすべての駅が島式ホーム(進行方向左側を開閉)のため、車掌がドア操作する上でも好都合である。なお、発車の際にベル鳴動等はないが、駅への列車接近の際は一部の駅でブザーが鳴る。

凱旋にて
最後尾も尾灯ではなく前照灯を点灯する(元々、前照灯・尾灯一体型の灯具を使用しているが、平壌地下鉄では尾灯は使用していない)。最後尾の乗務員室は無人。

復興にて
地下宮殿と呼ぶに相応しい栄光駅に停車中のD型。乗務員室のドアも引き戸である。
4両編成のうち、中間に封じ込めの元先頭車2両は前照灯が撤去されている。一方、運転台の部品は存置されていることから、車両基地内等では2両単位での分割運転も可能と思われる。
千里馬線のD型の車内の様子。ベルリンで使用されていた時から大きな改造は施されていない。広告は一切なく、広告枠のみが残されている。照明は節電のため、各車両3箇所程度のみ点灯。化粧板は木目調。側窓は内折れ式だが、現在は大半の車両が片側のみ一枚固定窓されている。
革新線のD型の車内の様子。千里馬線と完全に同一仕様。。
車端部。貫通扉はあるが、非常時以外は通り抜けできない(ベルリン交通局時代も同様)。貫通扉には折り畳み座席が設置されているが、使用できないよう固定されている。
すべての車両の貫通路上には、金日成主席と金正日総書記の肖像画が設置されている。以前は2人の肖像画とも若い頃の肖像画が掲げられていたが、金正日総書記没後に「太陽像」と呼ばれる壮年時代の笑顔の肖像画に交換された。
車端部の座席。他の国では、車端部はお年寄りや体の不自由な方の優先席に設定されている例が多いが、平壌地下鉄では「英雄・栄誉軍人席」(上写真)と「戦争老兵席」(下写真)である。
窓ガラスには、ベルリン時代につけられたスクラッチティ(ガラス表面に引っかき傷をつけた落書き)がそのまま残っている。
乗務員室仕切り。ベルリン交通局(BVG)時代から窓はない。左端が乗務員室との仕切り扉である。
一部の車両では、乗務員室仕切りの上部にLED式案内表示器が追加設置された。次駅や現在の駅等をスクロール表示する。
運転台。主要機器やボタンは朝鮮語表記が追加されている。
千里馬線の車両基地に留置されている、非営業車のD型。ベルリン交通局時代の黄色のまま保っているようにも見えるが、一方で妻面が改造されているようにも見える(右側に妻窓増設・貫通路閉塞)ため、事業用車化改造車の可能性もある。
元ベルリン交通局(BVG)のD型車両で運転。車内の蛍光灯はまばらに点灯し、やや薄暗い。各車両の車端部の貫通路上には金日成主席・金正日総書記の肖像画が掲げられている。非冷房車で、窓を開けて走行する。車両のドアは半自動式(開けるときは手動)。

Full HD Video
復興駅に入線する、当駅始発プルグンビョル(赤い星)行き列車と、折り返しのため留置線へ向けて発車する回送列車。

Full HD Video
平壌地下鉄のホームの駅係員は大半が女性である。丁度交代の時を見ることができた。ドアが閉まった後、駅員は発車合図を送る。

HD Video
ドア操作は車両最前部に乗務する車掌が行う。ドアが閉まる速度は非常に速い。発車の際には特に予告ベル等もなく、乗降が完了次第発車する。集電靴からの音を地下に響かせて栄光駅を後にする。

Full HD Video
平壌地下鉄の元 ベルリン交通局(BVG)D型車両のトップナンバー編成(701-702+703-704で組成された編成)が栄光駅に発着する。

Full HD Video
朝ラッシュ時で混みあう栄光駅のホーム。列車入線前には列車接近を告げるベルが鳴る。

Full HD Video
栄光駅を発車するプルグンビョル(赤い星)行き列車。内折れ窓の車両が多いが、この編成の最後尾車両(773)の窓は固定窓になっている。

Full HD Video
信号待ちで停車中のプルグンビョル行きの列車の隣に復興行きの列車が入線し、先に発車する。警笛が駅構内にこだまする。

Full HD Video

「平壌地下鉄−車両紹介」に戻る

Tweet