ブエノスアイレス地下鉄 元 営団地下鉄500形

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営団地下鉄(現:東京メトロ)300形・400形・500形・900形は地下鉄丸ノ内線向けの車両である。300形が1954年に30両(301〜330)、300形をベースに一部仕様変更した400形が1956年〜1957年に38両(431〜468)、400形を片運転台構造とした500形が1957年〜1964年に234両(569〜802)、500形をベースに中間車仕様とした900形が1965年・1969年に18両(901〜918)製造された。製造会社は汽車製造・日本車両・川崎車輌・東急車輛・日立製作所・帝国車輌。車両寸法は長さ18,000mm×幅2,790mm×高さ3,495mm(300形は3,500mm)。車体は鋼製。抵抗制御。丸ノ内線開業当初は3両編成で、その後4両編成、5両編成、6両編成と増結し(1954年3月〜1956年7月はオフピーク時2両)、1963年より分岐線を除き全列車6両編成で運行されている。

後継の02系の導入に伴い、1996年までに全車両が引退した。このうち、300形7両(304・306・310・311・315・325・328)、500形110両(584・590・593・602・619・620・623・624・633・634・637・639・640・641・647・648・650・653・656・657・661・669・676・678・679・680・687・689・690・691・696・697・698・700・703・704・708・709・711・712・713・715・716・719〜722・724・725・726・729・731・732・734〜741・744・745・746・749・750・752〜756・759〜762・765〜777・779〜790・793〜802)、900形14両(903・904・907〜918)の131両が1995年〜1996年にブエノスアイレス地下鉄に譲渡された。

電圧や軌間が丸ノ内線と同一であるため導入にあたって大規模な改造は不要であったが、従来車両のB線の車体幅(3,200mm)より車体幅が狭い(2,790mm)ことによる車体裾への鉄製のスペーサーの設置、発車ブザー用の車外スピーカーの設置(1両あたり片側2箇所)、車内へのLED式案内表示器の設置(現在は使用停止)等の改造が行われた。導入に際し、営団地下鉄からの技術支援が行われている。編成は丸ノ内線時代から組み替えられているものとそのままのものが混在。車体色は営団地下鉄時代のまま活躍しており、B線のラインカラーも赤となった。現在、大半の車両がMetrovías標準色(塗装)、黄色を基調として前面や窓周りを黒としたラッピング、そして黄色のグラデーションが全面に施されたラッピングの3種類のカラーリングに変更された。現地では形式番号ではなく、主に「Coche Mitsubishi」(コチェ・ミツビシ;三菱車)と呼ばれている(500形の主要電装品は三菱電機製)。500形の導入により、従来B線で活躍していたイギリスのMetropolitan Cammell製電車(1930年製)、アメリカのOsgood Bradley製電車(1931年製)、アルゼンチンのFabricaciones Militares製電車(1965年製)、アルゼンチンのSiemens-Fabricaciones Militares(Siemens-FM)製電車(1977年製)はすべて置き換えられた。

老朽化により、2015年より後継車両「CAF6000」によって廃車が開始され、2015年4月〜2016年2月に32両が廃車となった。32両の内訳は、300形が2両(306・328)、500形が22両(584・619・623・624・633・687・691・697・698・713・721・722・726・734・746・752・753・771・772・783・788・800)、900形が8両(903・904・911・912・915・916・917・918)である。廃車になった車両は大半が国営企業のオークションにより売却され、解体業者へ移送された車両も多い。但し一部がレストラン等の施設へ転用された他、771・734・584・752の4両は東京メトロへ里帰りした(584・734・771の3両は東京メトロで動態保存)。

なお、CAF6000の車両の不具合や改造工事の遅れ等により当初の置き換え計画が順調に進んでいないため、残りの車両は現在のところ当面運行される見込みである。

関連ページ:「ブエノスアイレス地下鉄 B線」「営団500形 東京へ里帰り」「営団500形B線引退車両−Pilar市内解体業者留置」「【鉄道模型】ブエノスアイレス地下鉄−元 営団地下鉄500形」

まるでタイムスリップしたかのよう。丸ノ内線から引退して20年以上経った今でも、当時の塗装のまま活躍する元 営団地下鉄500形。但し、大半は後述の新カラーリングに変更されている。

Echeverríaにて
原色の編成。2017年8月現在、原色のままの編成はD編成・S編成・T編成の3本のみである。

Echeverríaにて
Metrovías標準色に塗り替えられた編成。このカラーリングは2011年より登場し、腰部のサインウェーブ(サインカーブ)は塗り潰されている。また、前面にかかるサインウェーブのステンレス板は撤去されている。

Echeverríaにて
「Subte」ロゴ更新に伴い、腰部の帯及び前面貫通路に新ロゴが追加されたMetrovías標準色車両。従来あったMetrovíasの文字は消されている。
2013年末より登場した、前面や側窓部付近を黒としたデザイン。塗装ではなく、ラッピングによるものである。
2015年以降のカラーリング変更車両に適用されている、CAF6000のイメージに合わせたデザイン。ラッピングによるものである。
500形は2015年よりCAF6000によって廃車が開始され、2015年4月〜2016年2月に32両が廃車となった。但し、編成単位での廃車はB編成・F編成・U編成の3編成18両分である。一部編成では編成組み換えが行われ、状態の良い車両を集めて編成再組成が行われた。
写真のD編成は2号車の915号車を廃車として、代わりにR編成の一部廃車で余剰となった784号車(旧4号車)を組み込んだ。2017年8月現在、784号車のみMetrovíasカラー(R編成として組み込まれていた際にカラーリング変更済)、その他は現色の混色編成となっており、異彩を放っている。
1931年に開業したCarlos Pellegrini駅に停車中の500形。やや薄暗いホームと500形の組み合わせは、かつての丸ノ内線を彷彿とさせる。車両助士席側前面窓下のレスポンスブロックも当地では不要であるが残っている。
500形(写真は900形)のドア部。一部車両のドアの上には「Metrovías」のロゴが追加されている。号車番号表記(写真右上)は営団地下鉄時代のものをそのまま使用。
車体裾部にはホームとの隙間を埋めるスペーサー(ステップ)が設置されている。ドア部分だけでなく車体側面全体に設置されているのが特徴で、ドア部以外は三角形に板が取り付けられている。乗務員扉設置の有無で、スペーサーの車端部の処理が異なっている。
車体側面や前面貫通扉の車両番号表記は、営団地下鉄時代の書体の車両と書体を変更した車両(再塗装時に変更?)が混在している。
乗務員扉には「乗務員室」の表記が残っている。
営団地下鉄時代に運転台が撤去された768(左)と、運転台機能が残されている713(右)。営団地下鉄時代に運転台が撤去された車両は、乗務員扉の「乗務員室」表記がなく、扉自体も開閉できないようになっている。
車内の様子。写真は比較的原型に近い内装の737号車。化粧板は営団地下鉄での更新時にベージュのものに交換され、窓サッシもアルミ製のものに交換されている。500形の特徴の緑色の床や赤いモケットはそのまま。各車両2箇所ずつ、枕木方向にLED式車内案内表示器が設置されたが、後に使用停止し、広告と路線図が掲げられていた(LED本体は撤去済み)。2017年8月時点では、大半の車両が装置ごと完全に撤去された。
ファンデリアの中央に残る営団地下鉄のSマーク。
車内の路線図。沿線の道路の名称が路線図上部に書かれているのがブエノスアイレス地下鉄の路線図の特徴。島式ホームの駅は、駅マークの○印の中央に横線が入っている(ちなみに営団地下鉄・東京メトロの旧路線図では、同じマークで優等列車通過駅を示していた)。
室内の予備灯(非常灯)。ポイント通過時等の第三軌条が途切れる区間を走行する際に点灯する。
ポイントを曲がる際等に予備灯が点灯する風景はかつての銀座線・丸ノ内線の風物詩であったが、現在でも点灯する姿を見られるのはブエノスアイレス地下鉄のみである(銚子電鉄1000形(元営団地下鉄2000形)も予備灯は設置されたままであったが点灯はしなかった)。
予備灯点灯の様子。
非常通報ボタンの蓋に残る営団地下鉄時代の日本語表記。
上からスペイン語のステッカーで目張りされたものもある。
車端部の車両番号表記。営団時代の表記(右)と、ブエノスアイレスで設置された白地に黄色文字のプレート(左)で併記されている。
優先席のモケット。優先席としては使用されていないが、優先席などなくてもポルティーニョ(ブエノスアイレス市民)は皆、お年寄りや子連れ、妊婦に率先して席を譲る。
営団地下鉄時代にモケットの柄に青・赤の帯が入り、床敷物が大理石調のものに更新された車両(写真は678号車)。モケットに帯が入った座席に交換された車両が大多数を占める。
1985年頃から実施された更新で白色の化粧板に交換された車両(写真は715号車)。
窓上の広告枠には各種マナー啓発のポスターが掲示されている。
500形は片運転台、300形(・日本で全廃された400形)は両運転台であり、中間に組み込まれた際は乗務員室を折り畳める構造になっている。写真は678号車で、乗務員室部の壁は化粧板ではなく原形のピンク色塗装である。助士席側の前面窓も原形の一段加工窓。
営団地下鉄時代に白色化粧板に更新された650号車。助士席側前面窓もアルミサッシの2段窓に交換されている。
折り畳まれた乗務員室部。
営団地下鉄時代に運転台が完全に撤去された715号車。乗務員扉も塞がれている。
先頭車の車内(689号車)。
乗務員室仕切り。営団地下鉄時代と同様に助士席側の遮光カーテンは未設置。ブエノスアイレス地下鉄で希少な前面展望可能車両である。
元 方南町支線の車両(713号車)。方南町支線時代は先頭車であり、運転台は折り畳めない構造である。助士席側はチェーンで仕切っている。
貫通扉上部の表示字幕駅名順序表。丸ノ内線の駅名表記がそのまま残っている。
304・306・310・311・315・325・328の7両が譲渡された300形。営団地下鉄時代に中間車化改造が施され、戸袋窓は塞がれた。
300形の車内の様子(写真は311号車)。
新製時から中間車として製造された900形の車内。写真は909号車。900形は全18両中、903・904・907〜918の14両が譲渡された。
900形はドアの内側も化粧板が貼られている(他の形式はステンレス地)。写真はポイント通過中に撮影したため、戸袋部の予備灯も点灯している。
Echeverría駅に入線〜発車する、元 営団地下鉄500形N編成(732以下6両編成)。独特のコンプレッサー音も健在。甲高い発車ブザーを鳴らしてドアを閉め、発車する。

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元 営団地下鉄500形L編成(648以下6両編成)。Metrovías標準塗装の黄色に灰色帯に改められ、サインウェーブ(サインカーブ)は塗りつぶされている。

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Echeverría駅の上下線に発着する、元 営団地下鉄500形Q編成(724以下6両編成)とCAF5000型Z編成。

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カーブを曲がってEcheverría駅に入線する元 営団地下鉄500形I編成(657以下6両編成)。落書きを除去したためか、車体の塗装が色褪せしてしまっている。

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Tronador - Villa Ortúzar駅の上下線に入線〜発着する、元 営団地下鉄500形D編成とT編成。2編成とも丸ノ内線時代の色で、塗装も綺麗な状態で活躍している。

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元 営団地下鉄500形N編成(731以下6両編成)。ところどころ色褪せしているが、丸ノ内線時代の塗装をキープしている。

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Juan Manuel de Rosas駅に入線する元 営団地下鉄500形Q編成と、入れ替わりで発車するP編成を上から眺める。当駅は2013年に開通した駅で、B線の最西端の駅である。列車は原則交互に列車がホームに入線し、替わりに反対側のホームの列車が発車する。

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駅手前のポイントのデッドセクションを通過して、終点のJuan Manuel de Rosas駅に入線する元 営団地下鉄500形B編成(721以下6両編成)。反対側に停車中の車両は、新Metrovías色に変更された500形。2編成からのコンプレッサー動作音の合唱が駅構内に響き渡る。

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各駅には次の列車の発車時刻または到着までの残り時間を表示する案内装置が設置されている。列車の最後尾には車掌が乗務している。

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Juan Manuel de Rosas駅を発車する元 営団地下鉄500形O編成(696以下6両編成)を真横から撮影。流れるサインウェーブ(サインカーブ)が美しい。

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D編成797の車内から撮影した1駅間の前面展望。ブエノスアイレス地下鉄の車両の中では珍しく、元 営団地下鉄500形は前面展望が可能。地上へと繋がる線路はUrquiza線への連絡線。ファンデリアには営団地下鉄のSマークが残存している。

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G編成678の車内から撮影した3駅間の車内の様子。

ドアが閉まる前には車両の外側に追加設置されたスピーカーより発車ブザーが鳴る。Juan Manuel de Rosas手前のポイント通過時には予備灯が点灯し、一部の蛍光灯が消えて車内が若干暗くなる。

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2駅間の車内の様子。丸ノ内線時代と大きな変化はない。枕木方向にLED式車内案内表示器がブエノスアイレス譲渡後に設置されたが、現在は全車両使用を停止しており、LED本体が撤去されている車両も多い。

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空いている車内で1駅間の撮影。車内は営団地下鉄時代と大きな変化はなく、乗客がいないとまるでタイムスリップして丸ノ内線に乗っているかのようである。

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2015年に廃車になった2号車の915号車の代わりに、R編成の一部廃車で余剰となった784号車(旧4号車)を組み込んだD編成。2017年8月現在、784号車のみMetrovíasカラー、その他は現色の混色編成となっており、異彩を放っている。

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2017年8月現在、原色のまま活躍する営団地下鉄500形S編成。

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車体全体を黄色のグラデーションのラッピングで覆われた営団地下鉄500形N編成とK編成。2015年より500形は順次このカラーリングに変更されている。

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De los Incas - Parque Chas駅に入線〜発車する、新カラーリングに変更された営団地下鉄500形O編成。

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De los Incas - Parque Chas駅を発車する、新カラーリングに変更された営団地下鉄500形P編成。

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■編成別写真(編成は管理人確認分のみ掲載)
A編成。
Juan Manuel de Rosas側から順に661-756-779-780-755-680。

以下、すべてEcheverríaにて

以下、2015年〜2016年の32両分の廃車、及びそれに伴う編成組み換えの際、廃車となった車両を斜線、編成組み換えとなった車両を下線で示す。
B編成。
721-623-726-691-698-800

助士席側前面窓下のレスポンスブロックは、各編成ともJuan Manuel de Rosas寄り先頭車に設置(丸ノ内線時代は荻窪寄り先頭車に設置)。

2015年に編成単位で廃車された。
C編成。
789-736-725-801-739-790
D編成。
編成組み換え前:797-915-781-798-802-782
編成組み換え後:797-784-781-798-802-782

※915は2015年廃車。代わりに784(元R編成)が組み込まれた。
E編成。
759-760-749-750-715-716
G編成。
689-679-799-690-678-676
H編成。
641-774-761-762-773-708
I編成。
657-311-703-590-310-770
K編成。
編成組み換え前:669-325-619-602-315-620
編成組み換え後:669-325-787-602-315-620

※619は2015年廃車。代わりに787(元J編成)が組み込まれた。

Leandro N. Alem寄り先頭車である、写真の620は先頭車として使用されている車両の中で最若番の車両である。方向幕の周囲には方向識別灯設置跡が残っている。
L編成。
765-766-639-640-647-648
M編成。
777-711-775-650-712-776
N編成。
編成組み換え前:731-913-737-738-914-732
編成組み換え後:731-304-737-738-656-732

※913の代わりに304(元S編成)、914の代わりに656(元S編成)が組み込まれた。元の913と914はS編成に組み替え。
O編成。
編成組み換え前:735-767-768-713-754-696
編成組み換え前:735-767-768-745-754-696

※713は2015年廃車。代わりに745(元R編成)が組み込まれた。
P編成。
編成組み換え前:793-911-795-794-912-796
編成組み換え後:793-593-795-794-634-796

※911・912は2015年廃車。911の代わりに593(元J編成)、912の代わりに634(元J編成)が組み込まれた。
Q編成。
741-907-785-786-908-724
R編成。
編成組み換え前:783-328-745-784-306-746
編成組み換え後:(編成消滅)

※783・328・306・746は2015年〜2016年廃車。745はO編成、784はD編成へ供出により編成消滅。なお、同様にJ編成も一部車両廃車・一部車両他編成へ供出により編成消滅している。
S編成。
編成組み換え前:637-304-656-909-910-740
編成組み換え後:637-913-914-909-910-740

※304の代わりに913(元N編成)、656の代わりに914(元N編成)が組み込まれ、中間車が900形に統一された。元の304と656はN編成に組み替え。

写真のJuan Manuel de Rosas寄り先頭車の637号車の方向幕の周囲には方向識別灯設置跡が残っている。
上写真の編成反対側から見たS編成(編成組み換え後)。Leandro N. Alem寄り先頭車の740号車は先頭車として使用されている車両の中で唯一、貫通路周りに幌枠が設置され、アンチクライマーが左右に分割されている。
T編成。
653-744-700-729-719-720
U編成。
771-772-734-753-584-752

2015年に編成単位で廃車された。この編成のうちの771・734・584・752の4両は引退後、2016年7月に東京メトロへ里帰りし、771・734・584が東京メトロで動態保存されている(詳細はこちら)。

上写真:771
下写真:752

関連ページ:「ブエノスアイレス地下鉄 B線」「営団500形 東京へ里帰り」「営団500形B線引退車両−Pilar市内解体業者留置」

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